第263話 天命
学士の荘本淳は、幼いころに父の書石先生に随行して江岸に停泊している船に泊まった。
ところが彼は夜、足を滑らせて河に落ちてしまい、水夫たちは誰一人として気づかなかった。
彼は水中に漂っている間に何者かが話しているのを聞いた。
「福建学院を救わねば。これは我々に関わることだ。いい加減にしてはならない。」
彼は知らないうちに、もとの船の船尾の上に戻されており、助けを呼んで難を逃れることができたという。
その後、はたして彼は福建学政となった。赴任時、彼はこの話を私に語って言った。
「私はこの官位のまま返れなくなるということだろうか。」
私は十分に養生し、心を安らかにして天命に身をゆだねるよう、彼を説得したが、結局その在任中に亡くなってしまった。
また、彼の兄で礼部侍郎の荘方耕は、雍正の庚戌の年に都の邸宅にいたのだが、たまたま地震に遭い、小さな路地で押しつぶされそうになった。
するとちょうど左右の壁が向かい合って倒れ、互いに支えあって人の字の形に張った天幕のようになった。彼はその中で一昼夜過ごし、やっとのことで掘り出されたという。
これぞ天命ということではないだろうか。
紀昀(清)
『閲微草堂筆記』巻三「灤陽消夏錄三」より
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