第262話 龍鳳地

 俗に伝えるところでは、鵲(カササギ)と蛇が闘った場所を吉壤(風水において墓地とするのによい場所)とし、そこに墓を建てると巨万の富を得ることができるという。これを龍鳳地という。


 私が十一、二歳の時、淮鎮の孔氏の畑で、鵲と蛇が闘うことがあった。おじの安公實齋はそれを直に見たという。

 孔氏はそのためにそこを墳墓としたが、これといった霊験はなかった。


 私が思うに、鵲は虫けらを餌としている。時に小さな蛇を啄むこともあり、その蛇がうねって抵抗すれば、それが闘っているように見えるのである。これは生き物の生態として常のものであろう。


 きっとその昔、地師(風水をもとに吉相の土地を占う者)は人のために墓地にするのにふさわしい場所を占い、指さした場所がたまたま鵲と蛇が闘った場所で、そこに墓穴を掘ったのだ。


 これは陶侃(※)がその母親を葬った時と同じで、仙人が指さした場所が牛が眠っていたところで、そこを墓穴としただけにすぎないのだ。


 後の人々は霊験があるのを見、伝聞はその実を失い、鵲と蛇が闘った場所は必ず吉であるとなってしまったのだ。だとすれば、陶侃の件を鑑みるに、牛が眠っている場所はすべて吉であるということになってしまうではないか。


※陶侃・・・西晋・東晋の武将。その母湛氏も賢母として多くの伝説が残っている。この「牛眠地」の話は『晋書』の「周光伝」「周訪伝」などに記載されている。




紀昀(清)

『閲微草堂筆記』巻七「如是我聞一」より

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