天才(仮)
堕なの。
第1話 天才(仮)
俺は天才だ。周りからは自称と言われているがいつかアイツらも俺の才能に気づくときが来るはず!
「じゃあこの点数はなんだよ」
クラスの凡人山田。運動、成績、顔、その全てが平凡な男。
「なんつー紹介してやがる」
「な、お前俺の心が読めるのか。まさか、超能力者?!」
「お前は顔に出るんだよ。本当に愉快な奴だな」
超能力者だったのか。では先程の紹介は訂正しよう。彼は超能力という素晴らしい力を持っているにも関わらずそれを隠し通す、俺と同じ天才だー!
「違ぇし。つーか話を逸らすなよ。この点数やばいから面倒見ろって言われてるんだけど」
「うぐっ、それは天才の俺には必要のないものだ」
「うるせー、今日はファミレスだからな」
放課後、問答無用でファミレスに連れていかれた。解せぬ、俺がどうしてこんな庶民の店に。
「テメーもド庶民だろーが」
「な、この高貴で天才の俺に何を!」
「へーへー、後期で天才な佐藤様はこんな問題簡単なんだろうなぁ」
「それはもちろん、だが今日は腹の調子が悪く、」
「言い訳やめろ。やるぞ」
ぐ、こいつ。俺の渾身の話からのがれやがった。普段は解けるんだぞ。普段は。ただ、なぜか人前だと解けないだけで。
「はい、一問目。鳴くよ鶯?」
「平城京」
「なんと立派な?」
「平安京」
「逆だ」
なん、だと。この天才である俺が間違えた。そんなことあってはならない。
「俺は間違っていない。世界が間違っているのだ」
「よくそのスタンス貫き通せるよな。次」
こいつ、軽くあしらいやがった。
「いい国作ろう」
「古墳時代」
「何でだよ。幕府ですらねぇじゃねえか。つーか古墳時代とか忘れられがちな時代ナンバーワン(当社調べ)な時代がなんで出てくるんだよ。ちなみに古墳は何か分かるか?」
「武士たちがパーティーを開くところだ」
「どうして鎌倉に戻った。墓でパーティーすんな。不謹慎だわ」
テンポよく会話が進んでいく。鳴くよ鶯平安京、なんと立派な平城京、いい国つくろう鎌倉幕府。こいつと会話しながらならいくらでも覚えられそうだ。
「つーかお前よく学校入れたな」
「俺のスター性に気づいたんだろ」
「まあ定員割れしてっからな」
定員、割れ?
「そんなものしていない。お前の勘違いだ。俺たちは全員激戦の受験を勝ち抜いてこの学校にいるのだ!」
ふっはっはっはっと高笑いした。すると、美人な定員が近寄ってくる。
「おやお嬢さん。私に何か用……」
「ご退店ください」
店からつまみ出された。なるほど、俺がイケメンすぎて引け目に感じてしまったのだな。しかしそんなことを感じる必要はない。俺はみんなに優しい、
「恥ずいからやめろ。お前の家に行くぞ」
「無理だぞ。鍵を持っていないからな?」
「は?」
「お前の家に行かせろ」
「断る」
「行かせろ」
「断る」
「行かせろ」
「余計なことすんなよ」
皆恥ずかしがりすぎだ。俺が行くからといって遠慮する必要などないのに。
「これはこれで疲れるな」
「では往くぞ!」
この時の山田の小さな声は、俺には聞こえなかった。
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