砂糖

@Auratum

砂糖

砂糖を飲み込んで擬似的な幸せを感じるだけ。


 帰る気力もなく立川駅を出たところのスターバックスに入る。

 数年前に家出してから、そのことに唯一触れてこない親戚が1人だけいる。彼女は私の大叔母にあたる人でYちゃんと呼んでいた。Yちゃんからはは季節の移り変わりことにスターバックスのギフトがラインで届く。 私は500円ギリギリになるようにチャイのトールサイズを頼んだ。


 ライダースを着た甘い顔の男と小柄な女が旅行先について話している。落ち着いた女性はダイアリーを開いてスマホに両手で何かを打ち込んでいる。ちょうどその間だけ席が空いていて私は体を横に差し込むように窮屈に座った。


 自分はつくづく恵まれていると思う。生まれてこの方苦労と言ったことはしてこなかった。こんなにも幸せな環境で、とても恵まれているのに。あいつが殺そうとして来ている。

 ゆっくりと、眠っている記憶を使うこともあれば、正義と正義を守れていない現実を探し出してくることもある。

 もし私が他の誰かによってでなく死ぬ時、自殺ではなくあいつに殺されている。

 あいつは自分のことを誰よりも知っているけれど、自分のことを見たことは一度もない。虚像を見て大まかな形として認識しているだけで、接触することは決して出来ない。

 私はいつしか眠ることが怖くなって、限界まで起きては睡魔に負けて眠りにつき不健康なくらい長い睡眠を取る。


 阿保みたいに長時間働いたり、はたまた何もしなかったり、色々な時間を使ってみるけど、あいつが消えることはない。

 自分はサボるし、容量がいいわけでもない、怒られたくないから真面目な感じでいる。賢くもないのに賢くあろうとして出来ない勉強や意味もないのに硬い本を読んだりしていた。


 人の感情に触れたくないと思う。限られた人たちとだけ話していたい。交友関係を広げたくない。外に出たくない。生きていたくもない。自分が自分を殺すことはできないので、あいつが自分をいつか殺してくれるんじゃないだろうかと、その日を待っている。

 生きづらいんじゃないか、病院に行って治療したら、と言われても自分はあいつに殺されることを真に求めているんじゃないかと思う。


 今この文を書いているのは、最後に残った生きたいという私、が書いている。あいつではなく私自身が。

 闇に秘めた部分は恥ずべき部分で、隠しておくべきだと思う。それがあいつと私の正義。感謝や恩が表向きで、そういったものを綴っていきたいと思うけど、いつも対面には影がある。


ただそれだけ。

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