第39話 人気ランキングの結果

「む、そろそろランキングが発表されますよ」


 いつの間にか会場には巨大なスクリーンが出現していた。

 あの画面に表示されるのか。


「とりあえず、我々の順位を見てみましょう。まあ、話題になっていないだけで、あれだけの功績を残したのだから、実はかなり上位に食い込んでいる可能性もありますぞ」


 フォトは期待に満ちた表情である。


 確かに誰もSNSとかで話題にしないだけで、実は実力が評価されていて、蓋を開けたら凄く人気でした。


 そんな可能性もゼロではない。


『お待たせしました。それでは、人気ランキングを発表します!』


 会場に響く声に各怪盗が息を飲むのが分かった。

 僕も少しだけ緊張してしまう。


 ドキドキ感とワクワク感。

 人気ランキングも一つの目標として悪くないのかもしれない。


 そしてスクリーンに最初の怪盗の名前が映し出された。

 その名前は……怪盗クチナシ!


「え? 僕が最初!?」


 思わず声が出てしまう。

 まさか一番手に名前が載るのが僕とは思わなかった。


「げふああああ!」


 懐からフォトの悲鳴のような叫び声。

 よく見ると、白目で痙攣している。


「マ、マスター。気を強く持って聞いてください。ランキングは順位の低い怪盗から順番に発表されるのです。それが発表のルールです」


「へえ、そうなんだ。ってことは………………あ」


「はい。マスターは最下位です」


 く、やっぱりダメだったか。

 現実は甘くない。

 結局、僕は誰にも認知されていなかった。


 それにしてもまさか最下位とは。

 やはりステルス能力をなんとかしないと希望は無い。


「マスター。最下位となってしまった今、もはや後はありません。次が最後のチャンスだと思っていいでしょう。もし次に全く結果が残せなかったのなら、その時は……」


 僕の命は無い……か。

 そうでなくても、怪盗は辞めなければならないだろう。


 それは……嫌だ。

 僕はまだ怪盗を続けたい。

 今ではそう思ってしまう。


 最初は辞めさせられてもしたかないと思っていたのに、自分の心境の変化が驚きだ。

 でもせっかく姫咲さんとも仲良くなれたんだ。


 もう少し続けていけばきっと僕は変われる。

 そうだ、ここからなんだ。


 やっと怪盗が楽しいと思えてきた。

 だから、まだ終われない。


「ええ、マスター。ですが、悲観することもありません。お忘れですか? あなたは最強なのですよ。大丈夫、次は絶対に認知されます。ドンと構えていきましょう!」


 フォトの方はあくまで強気である。

 確かに不安になっても悪循環となるだけだ。


 次が最後だとしても……いや、最後なればこそ、後悔だけはしないように挑みたい。


「せっかくだし、ランキングは最後まで見ておこうか」


「ふん、私としてはもう見たくありませんがね」


 次々と怪盗の名前が映し出されていく。

 会場からはそれぞれの反応が返ってきた。


「ふ、ランクアップね」


「ぬう! ランクが下がっている!」


 喜んでいる怪盗がいれば、悔しがっている怪盗もいた。

 反応はそれぞれだ。


 最後に発表された名前は怪盗アメジストだった。

 つまり、今回も彼女がトップだ。


「くそが! また2位かよ! あのクソ女、絶対に許せねえ!」


 一段と荒れているのは、その一つ前に名前が表示された怪盗メギド。

 悪鬼のような目でアメジストを睨みながら壁を蹴りつけている。

 かなり嫉妬深い性格らしい。


「さて、マスター。発表も終わったことだし、ここからは本来の目的に向けて動きますよ」


 本来の目的。

 つまりペアを組む怪盗を探し出す事だ。


 最下位である以上、やはり自力で人気を上げるのは難しく、他の怪盗の手を借りる他ないだろう。


 だがこれは僕には難しい仕事だ。

 本人曰く交渉術の達人らしいフォトに任せるしかない。


「しかし、まさか最下位とは。これは少々苦戦するかもしれません」


 珍しく不安そうなフォト。

 果たして僕と組んでくれる怪盗はいるのだろうか?

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