第37話 怪盗本部へ到着!
翌日。
今日が全国怪盗ランキング発表の日だ。
ちなみに学校の方はお休みなので、今日は丸一日使えることになる。
「さて、マスター。今から怪盗本部へと移動します」
「そういえば怪盗本部って、どこにあるんだ?」
怪盗本部は全ての怪盗を統括する機関として噂になっている。
だが、そこがどこなのかは不明である。
完全に謎に包まれた場所なのだ。
「実はですね。私のワープ機能を使って移動するのです」
「ワープ!? 君、そんなことができたんだ」
そんな便利な機能があったら、是非とも怪盗活動でも使いたい。
「残念ながら、ワープできるのは本部のみです。これは秘密を保持するための機能です」
そのためだけのワープ機能なのか。
それだけ怪盗本部は謎に満ちているという事だ。
ちょっとワクワクしてしまうのは、僕の怪盗としての血がそうさせているのだろうか。
「では、早速行きましょう。ワン、ツー、ドロン!」
フォトの掛け声とともに目の前が真っ暗となった。
一瞬だけ平衡感覚が無くなる。
まるで無重力の世界に放り込まれたような感覚。
どうやらこれがワープしている状態らしい。
一瞬のような永遠のような謎の感覚を体験した後、気付いたら僕は知らない場所にいた。
見た目はパーティ会場のような場所だ。
今からダンス会でも始まりそうな雰囲気である。
「さあ、着きましたよ。ようこそ、怪盗本部へ!」
自慢の家に友達を招待するような声を上げたフォト。
そして僕の胸元へ飛び込んでくる。
「ちなみにこの場所は現実と異次元の狭間にあります。だから、絶対に一般人が見つけることはできません。誰も怪盗本部を発見できていない理由がこれです」
「異次元って……凄いね」
会場にはすでに何人かの怪盗が到着して、談笑していた。
怪盗の間で交流は深いらしい。
「えっと、フォト。緊張してきた。挨拶とかいる? 無理だ。よし、帰ろう」
「ヘタレるんじゃありません! まあ、怪盗に上下関係とか無いので無視でいいですよ」
さらに増えていく怪盗たち。
一人、また一人と空間転移のようにいきなり現れる。
全員がワープ機能を使っているのだから当然か。
中にはテレビで見るような有名怪盗までいた。
そう思うと、酷く場違いな感覚に襲われる。
ここにいる怪盗は皆が自信に満ち溢れているのだ。
それが本来の怪盗の姿なのだろう。
「ふっ。今回のランキングは自信がある。たくさんの子猫ちゃんに応援されたからね」
「あら、大した自信ね。でも、その子たちは私の子猫ちゃんかも知れないわよ。あの子たちが投票するのはあなたじゃなくて私の方ね」
本当に子猫ちゃんとか言うんだ。
フォトの言っていた決め台詞が普通だというのは、まんざら嘘でも無いかもしれない。
これも怪盗世界の常識なのだろう。
とりあえず、端っこへ移動してステルスを全開にしよう。
僕みたいな陰キャはこんな陽の気に当てられたら干からびてしまう。
他の怪盗を観察するいい機会だし。
存在感が無い一番の利点は、外の視点からの観察がやり放題という部分だな。
しかし、見れば見るほどコミュ障の怪盗が異質だと分かる。
もう、オーラからして違う。
きっとここにいる怪盗達は、それぞれが人生において何らかの成功者なのだろう。
僕なんかただゲームが上手いだけだからな。
フォト曰く、それが一番の強さに繋がるらしいが、やはり華やかさで言えば明らかに欠けている。
フォトはこの状況を見て何を思っているのだろう。
また説教が始まりそうな予感だ。
「9点、8点、9点……ふん、この場の怪盗の点数はこんなものですね」
……他の怪盗を点数付けしていた。
この状況でよく他人のランク付けなんかできるな。
「でも、フォトにしては基本的に高得点が多いね。やっぱり怪盗は凄い人ばかりだもんね」
「何を言ってるのですか。言っておきますが100点満点ですよ。奴らはまるで話になりません」
「100点で満点かよ! 評価厳しすぎだろ!」
「マスターも早く100点を取れるように頑張ってくださいね。あなたにはその素質があります」
「ちなみに今の僕は何点なの?」
「聞きたいですか?」
「……いいや。やめとく」
輝いている他の怪盗が10点未満なら、僕なんてマイナスを付けられるんじゃないか?
「それより、ここにいる怪盗とペアを組んでもらうんだよね。どうやって勧誘するの?」
「まあ、それは後にしましょう。今は発表前なので皆さんもそれどころではありません」
よく見ると、ほんのわずか会場にはピリピリした雰囲気を感じた。
皆が自分の順位を気にしているのだろう。
フォトの言う通り、確かに勧誘するなら発表後の方が良さそうだ。
「む? 現れました! 90点です!」
敵視と恐怖を込めてとある怪盗を見るフォト。
思わぬ高得点である。
彼女にここまで言わせるのはどんな怪盗なのかと僕も目を向けてみると、そこにこの世のものとは思えないほど美しい女性が歩いていた。
宝石のような綺麗な瑠璃色の瞳に紫の髪。
すらりと伸び切った手足は女性にしては高身長であり、その目つきは男に負けてないくらい鋭い。
そこには凛とした気高さのようなものがある。
「お疲れ様です! アメジスト様!」
周りにいる怪盗たちが頭を下げて彼女の名前を呼んでいた。
僕でも知っている有名怪盗だ。
「怪盗アメジスト。ランキング1位の怪盗です。つまり、怪盗のトップですね」
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