第24話 私を盗んでください♪
僕の正体を黙っていてくれる代わりに姫咲さんのお願いを聞くことになった。
果たしてどんなお願いをされるのだろうか?
「あのね、私ね。怪盗さんに盗みに入って欲しい場所があるんだ」
内容は、どうやら怪盗の依頼らしい。
「ほう。つまり、マスターの怪盗行為が見たいと。ふふふ、なるほど。マスターのかっこいい姿を見たいわけですな。いいでしょう。構いませんね、マスター?」
「もちろんだよ。でも、あまりハードルを上げないでくれよ」
それが僕の正体を黙っていてくれるための交換条件だったら、むしろ破格である。
こっちからお願いしたくらいだ。
でも、なんだろう。
なんか姫咲さんの目がちょっと普通じゃないような……気のせいか?
「場所はね。ここなんだ」
住所を指定する姫咲さん。
僕に行って欲しい所はあらかじめ決まっていたようだ。
「了解です。では予告状を送りますね。ちなみに姫咲さん。マスターの怪盗名なのですが……」
「知ってるよ。怪盗クチナシさんだよね?」
「げっ! 正解ですが、なぜ分かったのですか!? やはり、名前ですか?」
僕も驚いた。自分がどの怪盗かまでは言ってなかったはずだ。
もし名前から連想されたのだとしたら、これは改名の余地がある。
「う~ん。なんとなく、かな。昨日に会ったでしょ? 雰囲気がその時の怪盗さんと似ていたんだ。だから、今回も梔子君の事を追ってきたんだよ」
「なんとなくって……フォト。雰囲気で正体を見抜かれる事とかあるの?」
「いえいえ、そんなことができるは姫咲さんだけですよ。一般人は認識疎外の壁を突破できないのが普通です。よほど怪盗が好きなのでしょうね」
この町の科学力すら凌駕するとか、姫咲さんの怪盗好きは異常と言っていいレベルだ。
「ちなみにお仕事の件ですが……相手が予告状を拒否する可能性もあります。その場合は申し訳ないですが、諦めてください」
予告状を受け入れるかどうかは相手次第なので、これだけはどうしようもない。
「大丈夫。ここは絶対に予告状を受理するよ。ウェルカムです」
なぜか確信しているような口ぶりの姫咲さん。
知っている場所なのか?
「だってここ、私の家だもん」
「え、そうなの!?」
ターゲットは姫咲さんの家だった。
そういえば、彼女の家はお金持ちだ。
ミッションの場所に選ばれても不思議ではない。
でも、クラスメイトの家で盗みを働くとか、ちょっと罪悪感がある。
「姫咲さん。あなたは自分の家の物を盗んで欲しいと言っているのですが、その意味を理解しているのですか?」
「うん。自分の家だから、むしろ遠慮しなくていいんだよ」
確かに他人の家の物を盗んでくれ、とか言うよりは気が楽なのかもしれないが……
「ここは私がパパから貰った自由にできる屋敷なんだ。怪盗さん専用に作り替えちゃった」
屋敷一つを自由にできるとか姫咲さんの家ヤバすぎだろ!
僕なんかとは住む世界が違う。
「それでも、かなりの高級品を盗まれるのですよ。先に言っておくと、我がマスターは最強の怪盗です。盗まれるのは確定だと思っていいでしょう」
それはちょっと過大評価だ、と言いたいが黙っていた。
僕もやるからには失敗をするつもりは無い。
物を盗むという点に関してだけは本当に自信がある。
「ふふ、高級品…………か」
それを聞いた姫咲さんはなぜか悪戯っぽく笑っていた。
どういう反応だろう?
「まあいいです、それなら姫咲さん。盗むものを教えていただきませんか?」
お宝が何かはどうせ後で分かる。ここで聞いてもいいだろう。
姫咲家の物なので、何をお宝にしているのかも知っているはずだ。
先ほどの含み笑いから察するに、かなり特殊な物をお宝にしていると見た。
僕が盗むものは果たしてどんなものなのか。
「今回のお宝はね。なんとこの私、『姫咲莉愛』なのです!」
「「…………は?」」
僕とフォトの声が重なった。
お宝が姫咲さん?
どういう事?
彼女の心を盗んで欲しいとか、そういう事?
あれをガチでやれと?
ちなみに姫咲さん本人は、両頬に手を当てて顔を赤らめていた。
……なに、その反応?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます