最強のコミュ障怪盗とポンコツ毒舌人形

でんでんむし

プロローグ コミュ障さん、怪盗やってみませんか?

第1話 怪盗指定都市



「ねえねえ、また怪盗が出たんだって」



 今や聞きなれた単語を、僕こと梔子瞬くちなししゅんは耳にする。


 現在は放課後。

 まだ帰る気にはなれなかった僕は、教室でふて寝をしていたところだ。


 ここは『怪盗指定都市かいとうしていとし』。


 この街では日常的に様々なが出現するのだ。


「怪盗たちがで認められているなんて、本当にこの街って凄いよね」


 そして、この街では怪盗達を公式として認めている。


 街に出現する怪盗をエンターテインメントとして利用して、更なる発展を目指したのだ。


 そして怪盗は街の名物として受け入れられるようになった。


 今やこの町にとって怪盗は日常。

 怪盗達の名を聞かない日は無い。


 怪盗達はそれぞれがを持っており、人々はその能力に釘付けである。


 それどころか多くのを持つ怪盗も少なくない。

 怪盗は人々の憧れの的にもなった。


 政府に認められた怪盗たちは、を守り、を得られた場合にのみ、怪盗行為が可能となる。


「ねえねえ、昨日のライブ、楽しかったよね」


 女子達はについて話題にしていた。

 この教室での恒例行事である。


 ライブと言えば、普通はコンサートを連想するだろう。


 しかし、この町でのライブはコンサートの事ではない。

 この怪盗指定都市ならではの大きな意味を成す単語である。


「うんうん。怪盗アメジスト様、すごくかっこよかった! 最高だったよ!」


 この町でのライブは、のことを言う。


 怪盗が実際に宝を盗む姿を、人々がお金を払って見学することができるのだ。


 ライブには何千人という人が集まる。

 そしてそれぞれが入場料を払って怪盗を応援する。


 中には指定席という、間近で怪盗を拝むことが可能な高額チケットなんてものも存在するらしい。


 そう考えたら、本当にアイドルのコンサートと変わりない。


 怪盗によっては応援に来た観客の手を握るなど、サービスを行う人もいるとか……


 今話題になっているのは『怪盗アメジスト』。

 とてつもない美貌と人間離れした強さを持ち、街で一番人気の女怪盗だ。


 様々な怪盗がいるからこそ、その人気にも大きく差があり、怪盗たちはそれを競い合っていた。


 なんてものもあるくらいだ。


「ああ、怪盗さん……もっとお近づきになりたいよ~」


 そんな時、乙女チックな目をして天井を見上げている一人の美少女が僕の目に留まる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る