2
あずきはその小指に白い包帯を巻いている。
それは昨日、お皿を割ってしまったときに、できた傷を癒すためのものだった。
天気は雪。
昨日からずっと、世界には真っ白な雪が降り続いている。
そんな世界が真っ白な色に染まる風景をあずきは学校の教室にある(窓際の)自分の席に座ってただじっと見つめていた。
「どうしたの? あずき。さっきからずっとぼんやりしちゃって」
友達の木花くるみがあずきにいう。
くるみはいつものように笑顔。
「くるみはいつも笑顔だよね。いいな」とあずきはいう。
「いつも元気なのが私の取り柄だからね」
とにっこりと笑ってくるみはいう。
きーんこーん、と授業の開始を告げるチャイムが鳴る。
その音がしてすぐに、がらっと言う音がして教室のドアが開いて、そこから担任の春山古風先生がみんなのいる教室の中に入ってきた。
「みなさん。おはようございます」
優しい笑顔で古風先生が言う。
その古風先生の顔を見て、あずきはその頬を(誰にも気づかれないように)赤く染める。
それから(いつものように)朝の時間が始まる。
なにも変わらない毎日の風景がそこにはある。
ふと、古風先生があずきを見る。
古風先生と目があってあずきはすごくどきっとする。
でも、古風先生はにっこりと笑ったまま、(あずきの気持ちに気づかずに)視線をすぐに違う生徒に向けてしまう。
そして、朝の時間が終わると、古風先生はそのままみんなに挨拶をして教室を出て行ってしまった。
あずきはなんとなく自分の包帯の巻かれている小指を見る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます