限りなく青に近い空の下で

第2話



 「ねえ、あやね。私がどんな球でも受けてみせるから、思いっきり投げていいんだよ?」



 くしゃくしゃの笑顔のまま、彼女はそう言った。


 雨上がりのグラウンドの上で、泥だらけのユニフォームを少しも気にすることなく。




 「ヒロ!」



 私は彼女のことをそう呼ぶ。


 あだ名をつけるわけでもなく、単に呼び捨てで。


 だけど、昔から親しみを込めているその呼び名で、彼女を呼ぶ。



 「呼んだ?」



 振り向きざま彼女が言うそのセリフは、いつもどこかあどけなかった。


 何億回も言ってきた。


 「ヒロ」と。


 その度に彼女は笑顔を見せる。


 穢れのない眼差しで。


 いつだって元気な、底抜けの明るさで。




 私は、彼女と「親友」と呼べる間柄なのかもしれない。


 友達、家族、仲間。


 人間同士の、いろんな親しい関係性がある中で、私たちはもっとも信頼を寄せ合える仲なのかもしれない。



 私は彼女のことが好きだ。


 世界中の、誰よりも。



 そのことを伝える必要はないのかもしれないけれど、いつか彼女には、この胸のうちにある想いだけは、伝えたいと思うことがある。


 “彼女に嘘をついた”、あの時もそうだった。

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