麦畑の見える丘で

平木明日香

プロローグ

第1話








あなたは知っているだろうか?


私たちがかつて、違う星にいたということを。



世界には約束事があった。


星をめぐる旅の中で、戻らない時間があること。


世界中に散らばる星を探して、たった一つの「今日」を見つけることを、願っていること。



あなたは私に教えてくれた。


麦畑の見える丘の上で、いつか、永遠の別れを、空に託さなければならないこと。


私たちはその「光」なのだと、あなたは言った。


138億光年の峰に続く、「未来」そのものなのだと。



…だけど、もう2度とあなたに会えなくなるのは嫌だった。


宇宙船の扉を開け、最後にあなたの顔を見た時、私はどんな顔で、あなたに「さよなら」を言えばいいかわからなかった。


最初からわかっていたんだ。


心の奥でどんなに願っても、明日が、今日を追い越さないこと。




だから、私は運命に抗おうと思ったんだ。


今もこうして膨張を続ける宇宙の地平線の中に、いつかまた、あなたに出会える場所があることを。

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