第14話 奏多、配信を観る②

『ファイア――三倍!』


 配信を開くと、暗女がちょうど魔法をモンスターに向かって攻撃しているところだった。

 魔力出量の制御を練習をしているのだろう。


『うんっ! いい感じ……かも』


 汗を垂らしながら、呟く。


「暗女、すごいな……前よりも魔力制御が上手くなってる」


"さっきより上手くいったんじゃない?"

"暗女ちゃん頑張れー!"

"みんながついてるぞ~!"

"ファイト~!"

"少し休憩したほうがいいよ"

"暗女ちゃんすごい~!"


 励ますコメントがたくさん流れる。

 暗女の家族のことを知ってる人も視聴者の中には多いのだろう。同接は二十万人を超えていた。


「俺もコメントするか」


 このままROMってもよかったんだが、

 頑張ってる姿を見たら、一声かけたくなった。


"暗女、おつかれ! 頑張ってるみたいだな! いい感じだぞ~!"


 コメントを送信する。

 すると、すぐに視聴者が反応する。


"奏多キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!"

"さっき芽衣ちゃんの配信にいたよな!"

"すぐ違う女か……"

"これは浮気ですね"

"芽衣ちゃんが黙ってないぞ!"

"暗女ちゃん奏多が来たぞー!"


 芽衣のことが話題にあがるがスルーする。


『か、奏多さん! 来てくださったんですね! う、嬉しいです!』


 頬を染めながら笑顔を浮かべた後。

 目の前のモンスターに向かって詠唱する。それと同時に暗女の大きな胸も揺れる。


『ブリーズ――! 三倍!』

『ファイア――! 四倍!』

『ライトニング――! 五倍!』


 氷、炎、雷の属性魔法を目の前のオークに向けて連続でくりだした。


『グッ……!』

 

 攻撃をうけたオークは一瞬にして戦闘不能になる。

 前回よりも魔力制御が上手くなっている。相当練習したんだろうな。

 だけど、そんなに魔法を連発して大丈夫だろうか。スタミナが心配だ。


『私、奏多さんから言われたこと上手にやれるようになりました! 身体の消耗も大丈夫そうです……』


 頬を染めながら笑顔を浮かべる。


"奏多に言われてることちゃんとやってたぞ!"

"家族のために頑張ってると思うと泣けてくる"

"暗女ちゃん強くなったなぁ"

"強くなっていく暗女ちゃん見るの楽しい!"

"笑顔も可愛いなぁ"

"暗女ちゃんの胸デカすぎだろ!"

"揺れ……"


 コメントも大盛り上がりだ。


"体調は大丈夫そうか? さっきから魔法を使いすぎな気がするけど"


 コメント送る。


『だ、大丈夫です! でも、最近、肩こりが酷いんですよね……魔法の使いすぎでしょうか?』


 暗女は肩に手を回しながら答えた。

 恐らくその大きな胸が関係してると思われるが、そのことについてはスルーすることにした。

 ちなみに詠唱するときに必ず揺れている。


『ゴゲゲゲゲゲゲ』

『ギャガガガガガ』

『ヴギギギギギギ』


 すると、暗女の目の前に新たにゴブリンが二十体ほどの群れで現れた。

 ゴブリンはBランクのモンスターだ。

 基本は群れで行動しているのでソロで敵対するとかなり厄介だと聞いたことがある。知性もあり統率も取れるため油断大敵だ。


「暗女のやつ、大丈夫か?」


 俺はポツリと呟く。

 すると、暗女は杖を高らかに掲げ唱えた。


『火炎魔法―――ファイアボール! 威力十倍!』


 ファイアボールは低級魔法だ。しかし、暗女のスキル『魔力バフ』で、その魔法は上級魔法並みの威力に変わる。


『ゴゲ……』

『ギャガ……』

『ヴギ……』


 ゴブリンの身体を一瞬にして焼き切る。


『ど、どうでしょうか?』


 暗女はおずおずとスマホの画面に目を向ける。


"凄いぞー!"

"低級魔法の火力じゃねぇ!"

"ってか、詠唱はやくね!"

"前の暗女だったら、スキルを使うの躊躇ってたしな"

"奏多のおかげでうちの暗女が強くなってるよ"

"ありがとな!"


 感謝のコメントが多く流れる。

 俺はアドバイスしただけだから、凄いのは暗女だ。


『あ、ありがとうございます! 私、奏多さんにアドバイスされてから沢山頑張りました……。その、褒めてくれて嬉しいです……』


 指と指をくっつけながら暗女は呟く。


"褒められて嬉しがる暗女可愛い"

"ツンツン"

"暗女ちゃんが頑張ってる姿見ると、俺も頑張らなきゃって気持ちになるよ!"

"奏多のおかげだな"

"恋をする女性は強いぞー!"

"暗女ちゃん、スキルを使えるようになって自身ついてきたよな"


 成長している暗女を見て、視聴者も大盛り上がり。


"少し休憩したほうがいいんじゃないか?"


『だ、大丈夫です! 修行ですから休んでたら意味がないです……!』


 そう意気込んだ後、暗女は中級魔法、上級魔法を連続で詠唱する。


『えいっ! えいっ!』


「暗女のやつ、魔力を使いすぎないといいけど……」


『奏多さん! み、見てください……! こんなにスキルを使っても大丈夫ですよ! もっともっと頑張りま――オロロロロロロロロロロ』


 笑顔を零しながら虹色の液体を口から吐き出す暗女。


"くらめちゃあああああああああん!"

"吐いたああああああああ!!"

"今回は大丈夫かと思ったけど、やったな"

"これが見たかった"

"うわああああああああああああ"

"笑顔なのが逆に怖いww"

"大丈夫か!"


 コメントが待ってましたと言わんばかりに勢いよく流れ始める。

 あれだけ魔法を連発したら、そりゃそうなるわな……。


 こうして暗女の配信は二十分という短さで終わったのだった。

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