第240話 ドロテア、リベンジマッチに挑む

翌朝、宿の食堂で待ち構えていたドロテアにまたしても捕まってしまったリュー。


もうスパイ容疑については疑っていないという事だったが、懇願されて、もう一度、ドロテアの障壁と対決をする事になってしまった。


毎度訓練場の壁を壊すのもなんなので、街の外に出る事にしたリューとドロテア。(ヴェラは一人で街でショッピングをしてると言っていた。)


まとがないが、どうする?」


「ああ、適当に……そうだな、その岩を目標にしよう」


そう言うと、ドロテアは岩に目印の十字と円を描くと、魔法障壁を張った。


場所は荒野、街を背にして、はるか遠くに人跡未踏の原生林と、その奥に山脈が見えるような場所である。つまり、強力な魔法を放っても問題ないというわけだ。


「今回は、昨日とは少し違うぞ、どう違うかは……まぁ論より証拠、さぁ、やってみてくれ!」


「……


…今日のは火属性特化の障壁か」


「って、せっかく秘密にしてたのに! やる前からあっさりと見破られてしまうとは、そうか、君は鑑定が使えるんだったな。仕方ない、その通り、全属性に対応させるよりも、一つの属性に絞ったほうがより強固な障壁とする事ができる。今度はそう簡単には破らせないよ?」


「火属性特化と言う事は、他の属性には弱いんじゃないのか?」


「ああ、君が火属性の攻撃魔法を使っていたからね、それにあわせたんだ」


「俺は他の属性も使えるぞ?」


リューが手を翳すと、氷の槍が飛び、障壁をあっさり割って岩に傷をつけた。


※リューは水/氷属性のマスクに付け替えていた。リューは収納から瞬時にマスクを取り出して装着してしまう事ができるのだ。仮面のおかげでキレイな氷槍を飛ばせるのだ。しかもリューの膨大な魔力供給によって、絶対零度の強力な氷槍であった。


「ちょ! 君は火属性以外の魔法も使えるのか?!」


「俺も、まだまだ拙いが、全属性扱える。あんただって全属性対応障壁が張れるんだ、珍しくもあるまい?」


「なんて事だ……てっきり火属性特化のウィザードなのかと思ったのに」


「すまん、もう一度火属性特化の障壁を張ってくれれば、今度は火属性の攻撃をしてみるが」


「あ、あ……一応、試シテミマショーカ…?」


もう一度、ドロテアが火属性特化の障壁を張った岩に、今度は炎の魔法をぶつけるリュー。今回はマスク無しの力任せである。ただ、昨日、遠方の山まで消し飛ばしてしまったので、今日はそうならないよう、放射は瞬間的に、広範囲に散らないように集束させて放つ。つまり熱線である。集束された分、範囲は狭まるが熱量はさらに高くなるのだが……


…案の定、ドロテアの障壁はアッサリと砕け、岩に穴が開いた。


「…勘弁して。属性に合わせた防御まで貫通されたら、もう防ぎようがないわ……」


「障壁に魔法の耐性があるのは分かったが、物理攻撃を受けたらどうなんだ?」


「もちろん、物理攻撃に対しても有効だ」


「ちょっと見てもいいか?」


「ん? ああ、構わんが……」


ドロテアが魔法障壁を張り直してくれる。岩の前まで歩いて行くリュー。岩に触れようとすると、その前に魔法の障壁に阻まれる事が分かる。


軽く叩いて見たが、なるほど確かにビクともしない。さらに強く、最後は思い切り殴ってみたが揺らぐ気配はない。


「さすがに素手で殴って壊れるほど弱くはないさぁ」


「じゃぁ少しだけ本気を出してみようか」


「え゛?!」


竜人レベル上昇……50……100

重力魔法発動、体重極大化

魔力変換生成開始

身体強化…


ドロテアは、突然リューの身体がからとんでもない量の魔力を感じ、後退った。


「リュージーン?!」


さらにリューは拳に魔力を集中する。魔力のナックルガードだ。そして……


そのまま岩を殴りつけた。


その瞬間、破裂音とともに障壁は破壊され、さらに、超絶パワーアップ状態のリューの拳を受けた岩は轟音とともに粉々に砕け四散してしまった。砕けた岩の破片はかなり遠くまで飛んで行ったようだ。


驚きのあまり、大口を開けたまままた放心状態になるドロテア。


「……っ! そんな馬鹿なぁ~~~~っ!」


「意外とあっさりと壊れてしまったな」


「ちょっとまてぇぇぇ、あなたいったい、なぁにをしたぁのぉぉぉ? 今のは何?!」


「いや、魔力を込めて殴ったらどうなるかなぁと思って……」


「いいか、はっきり言うが、私の魔法障壁はこの国でナンバーワンだ。不滅の要塞なんて二つ名で呼ばれているのは、戦争で敵国の総攻撃を受けた城壁を、魔法障壁で数日間守り通したからだ。


数千の軍隊が放つ強力な魔法も、攻城兵器も、全てを完璧に跳ね返した。


それを、ワンパンで、わんぱんで破るなぁぁ~~~」


ドロテアはショックのあまり、膝をつき、両手をついてしまった。


「あ~ショックを受けているところ悪いんだが、もう一つ試したい事がある。あんたも魔法障壁だけでなく、攻撃魔法も使えるんだろう? 今度は俺に向かってちょっと撃って見てくれないか? 今度は俺の魔法障壁と勝負だ」



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


リュー、ドロテアの絶対障壁をコピーする


乞うご期待!



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