第130話 王国の混乱
一旦、王都へ戻ったリュー。
ただ、まだやる事がある。王に会ってその許可を貰ってから、またすぐに出立するつもりであった。
だが、王に謁見を申し込んだが、なぜか許可がおりなかったのだ。
それどころか、王宮に寝泊まりしていたリューであったが再び王宮に泊まる事は許されず、王宮を追い出され宿に戻る事となった。
転移で直接王の前に押しかける事もリューなら可能ではあるが、そんな事はしない。
今は、勝ったとは言え侵略戦争の後始末で混乱している時期である。未遂であったがクーデターもあった。王子も多数死んだ。王もきっと体制を立て直すのに忙しいのであろうと気を回し、待つ事にしたのであった。
* * * *
リューは王宮の資料庫に5日ほど籠もりきりであったため、王宮内(王国内)の情勢はほとんど把握していなかったのだが、その間に王宮には
王国内の戦力を再編し、各地の防衛体制を立て直すのは急務である。
国境の防備が弱くなれば、すぐに隣国が領地を奪いに来る。人間達はそんな事をここ500年ほど繰り返してきたのだ。
クーデターを企てた貴族の処分もしなければならない。
彼らは恩赦を期待して戦争へ参加しようとしていたが、結局戦争はリューが解決してしまったため、出る幕はなかった。そのため、大部分の貴族がそのまま処分を受けるしかない状況となってしまった。
しかし、ここで貴族を大量に処分してしまい、戦力を低下させるのも拙いと言う事になり、処分は保留とされた。
リューの報告で、魔族の国の台頭という新しい問題も浮上した。人間同士で仲間割れして戦力を減らしている場合ではない。
処分はあくまで保留なので、処罰されるはずだった貴族たちには、諸外国と接する国境や対魔族の対応などで貢献する事ができれば恩赦を与える事にしたのだ。
兵力を持つ貴族は、国境や辺境を守る領主の下に兵を拠出しなければならなくなったのである。
あくまで防衛力なので、戦争のように分かりやすく武功を示す事が難しいが、戦争をしなくて済むので命を失う危険は少なくなるので、その点は歓迎できる。
なんとか恩赦を受け王国内での立場を回復させたい貴族は積極的に動き出したのであった。
そして、少しでも成果を挙げやすい防衛地を求めて、西の魔族の国との国境に近いヴァレードの街に武力が集まった。
とりあえず魔族に対する防衛ラインは確保できたわけである。
もちろん、ヴァンパイアが本気で仕掛けてきたら防ぎきれないだろうが……。
今回の戦争で、王は多くの息子を失った。王の子は、第一王子のレジルドと末娘のソフィだけとなってしまったのである。
だが、ソフィは
王は王子達に各地の管理統制を任せていたが、息子たちに頼り過ぎ、信頼して仕事を任せられる貴族を作っておく事ができなかったのは失敗であったと言える。
第一王子は優秀な人間であったが、さすがに一人では無理があったため、王家の親戚筋である公爵家の助けを求めざるを得なくなったのだ。
だが、それには問題があった。
公爵のジョルゴはラルゴ王の兄であるが、あのギット子爵の父親である。ギットを甘やかした人物であり、本人も実はかなりの野心家である。
公爵が問題のある人物なのは国の上層部では有名な話であったのだ。
だが、それでも人手不足ではやむを得ない。
王もまさか短期間に王子が4人も死ぬとは考えていなかった。
(王族の中には王子を二桁も作る王も居るが、それもそれなりに理由があるのだ。)
王族が減れば、王族に連なる血筋の貴族である公爵家が後を継ぐ。制度上は仕方がない事である。
公爵には子供が四人居た。(実は非公式な妾の子はもっとたくさん居るらしいのだが、認知しておらず、公式な公爵家の跡取りは四人だけであった。)
四男であるギットは死没した。また次女も病死している。残るは長男のローダン、三男のマルケスだけである。
(※この国では男女の区別はなく、子供は単純に上から数えていく。
「三男」と呼ぶ。
また王位継承権も男女の区別はない。)
そうして乗り込んできた公爵とその息子二人。
だが、状況報告を聞いた公爵の長男がリュージーンという人物について疑念を唱え始めたのである。
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次回予告
王位を狙う公爵家がリュージーンの排除に動き出す?!
乞うご期待!
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