第84話 たかがギルドの受付嬢ごときが貴族に対してそんな態度、許されると思うのですか?

応援コメントくださった方、ありがとうございます。全員に返信できておりませんが、お礼は作品を書くことで代えさせて頂きたいと思います。よろしくお願いします。


それでは本編どうぞ


    ・

    ・

    ・

    ・

    ・


― ― ― ― ― ― ― ― 


「リュージーンが戻ってきましたら伝言は伝えておきますが、こちらではこれ以上の対応はできませんので、お引取り願えますか?」


「たかがギルドの受付嬢程度が貴族に対してそんな態度を取って、許されると思うのですか?」


「リュージーンへの伝言ならば承りますが……ギルドへの仕事の依頼というわけでもなく、個人的な話で内容もお話し頂けないと言う事ですので、これ以上はお助けできる事はないように思いますが?」


「貴様では埒が明かないようですね。上司を出しなさい、ギルドマスターはどこです?」


「ギルドマスターは所要で外出中です」


「あなたの態度、不敬罪で処断しても構わないのですよ?」


「冒険者ギルドは国や貴族とは関係ない、独立した組織ですから、そのような事はできないはずですが?」


「ギルドの職員であっても、その前にこの国の国民でしょう。国民の不敬を貴族が処断するのに何の問題もありません」


トッポの斜め後ろに控えていた護衛の騎士が剣の柄に手を触れ殺気を放つ。


だが、普段から荒くれ冒険者を相手にしている受付嬢レイラである、殺気に当てられやや怯んだものの、引く事はなかった。


そして、騎士は……


…騎士もまた、剣を抜く事はできなかった。いつのまにか、殺気立った冒険者達に周囲を取り囲まれていたためである。レイラの危機を察知し、ギルド内に居た冒険者達が全員トッポ達の周囲に集まって来ていたのだ。


受付嬢というのは冒険者達にとってはアイドルのようなもの。その受付嬢が、理不尽な貴族の横暴から冒険者を守ろうとしてくれているのだ。そのやりとりを見ていた冒険者達がレイラを守ろうとするのは当然の事であった。


殺気が満ち、一触触発状態のギルド。


だが、トッポ達は二人だけである。対する冒険者達は十数人。形勢不利を察したトッポはすぐさま手のひらを返した。


「貴族を待たせるなど、本当は許されない事ですが、まぁいいでしょう、私は優しいので許してあげます」


騎士は柄から手を放した。


冒険者たちの殺気も収まっていく。


その時、ギルドの扉が開いた。


ソフィ達が帰ってきたのだ。


「どうしたのじゃ? 何かあったのか?」




   *  *  *  *




スラムで無駄足を踏んでしまったリュー。


普段はなるべく歩いて移動するようにしているリューであったが、スラムから戻るのにもう一度歩いて戻るのも焦れったくなったため、転移を使う事にした。


街の正門近く、警備隊の詰所前の路上に魔法陣が浮かび、リュー達が現れる。


すると、ちょうどリューを探しに来た冒険者ギルドの職員がリューを見付けて声を掛けてきた。


なんでも、リューを探しているという貴族がギルドに押しかけて来ていて困っているとのこと。


警備隊でゴランと打ち合わせするつもりだったリューだが、自分に関わりのある事で困っていると聞き、とりあえず冒険者ギルドに戻ることにした。


転移でギルド前に移動しリューがギルドに入ろうとすると、それより先にソフィが滑り込んでしまった。おそらく貴族と聞いて自分の出番だと思ったのだろう。


中に入ってみると、受付前に高級そうな服を着た男と騎士が立っており、それを取り囲むように冒険者達が立っていたのである。




   *  *  *  *




「なんじゃ? 随分殺気立っておるが?」


事情を訪ねたソフィに近くの冒険者の男が答えた。


「貴族様がレイラを不敬罪で斬ると言い出してな……ってリュー、戻ったのか」


その声を聞いてトッポが振り返る。


「あなたがリュージーンですね? 随分と待たせるものですね。後で罰を与えないといけませんね」


「は? お前は誰だ?」


「無礼者、質問に答えよ!」


「人に名を尋ねるならまず自分から名乗ったらどうだ?」


「平民の冒険者風情がいきがるな。必要があれば名乗る、それを判断するのは貴族側だ」


「やめなさい、我々はリュージーンを迎えに来ただけですよ。名乗らなければ話が進まないでしょう」


だが、トッポが名乗るより先にレイラが答えてしまう。


「トッポ男爵です、ギット子爵家の家令をされているとか」


だがなぜかトッポはレイラの言葉を無視してもう一度自ら名乗った。


「私はトッポ。爵位は男爵だ、ギット子爵家の執事を任されておる」


大事な事だから二度言ったのだろうか?


なんとなく、執事っぽい格好をしているなとリューは初見から思っていたのだが、やはり執事であった。執事というのは、世界が変わっても執事らしい格好をしているものなのだなぁと思うリューであった。


「たしかに俺はリュージーンだが、何か用か?」


「ドラゴンの素材を納品しているというのはアナタで間違いないですね?」


「最近はあまりやってないがな」


「ギット子爵がアナタを専属で雇って下さると申されております。一緒に来なさい。礼儀がなっていないのも、これからみっちり教育してあげましょう」


「はぁ? いきなりなんだ? スカウトならお断りだ」


「何を言ってるのです? ギット子爵に雇って頂けるなど、これ以上ない名誉ですよ? ギット様は爵位こそ子爵ですが、公爵家にゆかりのある御方。断るなど許されませんよ?」


「ギット子爵じゃと? あのギットか?」


ソフィが驚いたように言った。どうやらギット子爵の名前を知っていたようである。ソフィが知っていると言う事は、どうやら公爵家に縁があるというのは本当らしい。


「なんです、そこの小娘? 無礼でしょう」



― ― ― ― ― ― ― ―


次回予告


トッポ男爵、ソフィに追い返される


乞うご期待!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る