第57話 シンと五剣の末路…
肩を竦めるリュー。
「いいのか? 降りかかる火の粉を払うのに手加減はしないぞ。 死ぬ覚悟はできているか?」
強い殺気を放ったリューに、シンがたじろぐ。
リューの手にはいつの間にか魔剣フラガラッハが握られていた。
言葉に詰まったシンに代わり、5人の男達が喋り始めた。
「自信過剰だ。オマエのほうこそ覚悟はできているのか?」
「俺たちを今までの雑魚と同じだと思っていたら大間違いだぞ」
「多少は腕に自信があるようだが、相手が悪かったな」
「我らは五黒星の中で“五剣”と呼ばれておる、聞いた事くらいあるだろう?」
「いや、知らんな、聞いたこともない。言うほど有名でもないんじゃないか?」
「ふん、素人が、闇の組織の噂を知らんのは仕方がなかろう。だが、それなら大人しくしているのが賢い選択って事もあるぞ? 多少腕が立つからといっていきがってる素人が痛い目を見る事になるのはよくあることだ」
「今の立ち回り見る限りは、四夜蝶を潰したというのはどうやら嘘ではないようだが、四夜蝶のような雑魚と俺達を一緒に考えていると後悔する事になるぞ」
「話が長いな、やるならさっさとやればいいんじゃないのか?」
「ふん、馬鹿な奴め……やっちまえぇ!!」
「オマエに指示されたくないわ!」
シンに偉そうに指示されて一瞬嫌そうな顔をした五剣の面々だったが、すぐ気を取り直してリューに向かって構えた。
リューに襲いかかる五剣の男たち―――だが、結果は先ほどとさほど変わらなかった。リューに攻撃を仕掛けた者は、次の瞬間には床に転がっていくだけである。
ただ、先程までと違うのは、リューも剣を持っている事である。
パンチで伸されていった男たちは、五体がバラバラにまでなった者はいなかったが、剣で襲いかかった五剣は、両手両足を斬り落とされ、床に散らばる事になったのである。
自信満々でリューに斬りかかっていった五剣だったが、あまりに高速で振るわれるリューの剣に対応できず、為すすべもなかったのだ。
「ば、ばかなぁぁああああ!」
「シ、シン!早く、治療シてくれ!ポーションだ!」
「ったく、偉そうな事言ってた割に瞬殺かよ。土下座までさせておいてなんだ!」
「悪かった、後でいくらでも謝る! はやく……今ならまだ治る!」
「そんな事してる余裕を敵さんが与えてくれるわけないだろ!」
「いや、構わんよ? 治療する間くらい待ってやるが?」
「早く……」
仕方なく、のろのろとバッグからポーションを取り出して治療にあたったシンだったが、ポーションを全部掛けても、飲ませても、一向に治癒する気配がないのであった。
「シン……頼む、意地悪しねぇで本物のポーション使ってくれ!」
「偽物なんかじゃねぇって! どうなってんだ、治らねぇんだよ!」
「ああ、言い忘れていたが、この剣には治癒阻害能力がある。この剣で斬られた傷はポーションや治癒魔法では治らないぞ?」
「な、んだとぉ……」
それを聞いた五剣の五人は絶望した顔を浮かべたが、やがて出血多量で意識を失っていったのであった。。。
残るはシン一人である。
ゆっくりと近づいていくリュー。後退って行くシン。
シンは懐に手を入れると何かを取り出した。取り出したものをリューに向かって投げる。
何らかの液体の飛沫がリューを襲った。
シンは毒性のある液体を投げかけようとしていたのである。
だが、神眼によって心を読んでいたリューは、シンが何をしようとしているのか分かっていた。
空中に放り投げられた液体は紫色の煙となって舞ったが、もうその瞬間には、リューはシンの背後に転移で移動していたのだ。
「どうだ?!」
と自分の攻撃の結果を確認しようとしているシンの肩を後ろから叩くリュー。
「うわああああああ」
背後にいるリューに気付き、驚いて振り返ったシンは、慌ててリューに斬りかかって行ったが、次の瞬間には、五剣と同じように手足を斬り飛ばされて地面に散らばる事になったのであった。
リューは、相手の力に合わせて手加減をしながら戦うのが癖になっていた。
手加減したとしても人間相手では圧倒してしまうので、いかに上手く手加減するかという事に日頃から腐心していたためである。
本当は、時空間魔法を使えば、襲ってきた者たちが殺されたと気づく事もないうちに全員の命を奪うことも可能なのであるが。
しかしそれでは、相手は後悔する間もない。相手に情けを掛ける場合はそうすることもあるが……
やはり憎たらしい相手には、相応に反省と後悔の時間を遺してやる事が必要だろう。
そこで、今回は首を斬らず、手足を切り飛ばして地面に転がす事を選んだのであった。
しかも、魔剣フラガラッハの治癒阻害能力がある。治癒魔法を持つ者が居ても治る事はないのだ。
斬られた者達は、出血多量で程なく死ぬ事になるが、それまでの間、慚悔の時を過ごす事になるわけである。
残された時間は長くはないだろうが、シン達にそれほど深い恨みがあると言う訳でもないので、それほど長く苦しませる事もないとリューは裁定したのであった。
再三警告したにも関わらず、っかかって来たのだから、自業自得であろう。
ましてや、自分を殺そうと襲ってきた者達である。許す気はないリューであった。
斬り捨てたシンと五剣はそのままダンジョンに放置して帰った。
時間が経てば、やがて死体はダンジョンに吸収されて綺麗になくなるのである。
素手で襲ってきた連中で生きている者は、スラムの奥に転移で戻してやった。もちろん、次にリューに関わったら殺すと警告付きである。それにより、五黒星の者達が手出しを諦めてくれる事をリューは期待した。
だが、当然のごとく、その期待は裏切られる事になるのであったが。。。
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次回予告
手を出すなって言ってるんだが?
乞うご期待!
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