第53話 シムダンジョン?
実は、ダンジョンを踏破しダンジョンの核の所有者となったリューは、ダンジョン再起動後はダンジョンに管理者として認定されていたのだった。
管理者なのだから、研修に利用するならば、ダンジョン「地竜巣窟」のモンスターの出現率について、ちゃんと調整しておく必要があったのだ。
だが、リューは核を設置しただけで何もせず放置していた。自然発生のダンジョンならまだしも、中途半端に人の手が入ったまま放置された結果、少々おかしな事になっていたのだった。
人間がダンジョンの管理者になれるというのは意外と知られていない。
それは、ダンジョンを踏破した経験のある冒険者がそれほど多くないからである。
また、迷宮都市と呼ばれる、ダンジョンを主要産業とするような街では、当然、核を傷つけたり持ち去ったりする事は禁止されている。ダンジョンは街の共有資源であるからである。
ただ、中には「管理ダンジョン」と呼ばれるダンジョンもある。国やギルドが管理し、資源として(あるいは初心者向けダンジョンとして)運用しているのである。
其のようなケースは、ダンジョン踏破後に踏破した冒険者が核の所有権をギルドや国に移譲・売却しているのである。
ただ、今の所、表向きは、リュージーンがダンジョンの核を破壊してしまった事になっている。そしてダンジョンは自然に復活した事になっているので、買取という話は出てきていない。
地竜巣窟については、リューは再起動後、とり急ぎ、ダンジョンからモンスターの階層間の移動を禁止とダンジョンから外出禁止の処置だけはしたが、そのまま放置してしまってた。その結果、ダンジョン内に異常な数のモンスターが溜まってしまっていたのだ。
禁止処置を解除し、完全に自然なダンジョンとしてしまえば、自然淘汰によりやがて魔物の数も安定するのであろうが、そうしてしまうと、外にモンスターが出てきて街の人に被害が及ぶ可能性がある。
また、冒険者ギルドがせっかく初心冒険者を育てる活動を始めたのだから、初期階層は初心者向けダンジョンとして使わない手はない。ならば、ちゃんと調整してやったほうが良いとリューはやっと気がついたのであった。
街に戻り、ギルドマスターにダンジョンの異常な状況を報告したリューは、階層ごとにどんな魔物が出ると理想的なのか、キャサリンに尋ねた。
それを聞いたキャサリンは言った。
「やっぱり、あなたがダンジョン管理者だったのね?(笑)」
リューは前ギルドマスターのダニエルには「ダンジョンの核は破壊した」と報告したのだが、そんな嘘はキャサリンにはバレバレであった。
人間がダンジョンの管理者になるという事はあまり知られていないとは言え、ギルド本部で働いていたキャサリンはそういう情報も当然よく知っていたのである。
ダンジョンが復活した時点で、リューが核を戻したのだろうとキャサリンは推測していた。ただ、キャサリンもギルド立て直しで忙しかったため、ダンジョンの調査確認も先延ばしになっていたのだった。
隠しておく必要もなくなったので、リューは管理者である事を認め、キャサリンと相談しながらダンジョンの魔物を再調整していく事にした。
いずれは国か領主かギルドで核の権利を買い取るという話になるとは思うが、とりあえず、しばらくの間は、リューが管理者であると言う事は伏せたまま利用する事でキャサリンとは合意したのだった。
* * * *
ダンジョン管理者は、各階層ごとに、出現するモンスターの種類や階層の特性を決める事ができる。
そこでまずは、初心者が挑戦できるダンジョンとして、1~8階層くらいまでを研修用に使う事にした。
出現するモンスターはゴブリンやコボルト、オークなど。
あまりレベルの高くないモンスターから始め、徐々に危険度の高いモンスターが出るようにした。
第8階層のボスは、そこまでの総仕上げと言う事で、それまで出現したモンスターの上位種、キング種などが出現するようにした。
第八階層までを初心者研修向けイントロダクションとし、第九階層からは普通に強力なモンスターが出現するダンジョンとなっていく。
深い階層に行くほどより危険なモンスターが出現する。当然、名前の由来になったアース・ドラゴンなども。
最深部のダンジョンボスは、ヒュドラであるのは決まっている。それを聞いてキャサリンは頭を抱えていたが。
ダンジョンの階層は既に100階層を超えており、危険なモンスターも深層部には多い。おそらく、最深部まで到達できる冒険者はいないであろう。辿り着いても、ボスモンスターのヒュドラを倒す事は不可能であろうと思われた。
だが、それはそれで良しとする。ダンジョンを踏破されてしまうと、核の所有権が移転してしまう可能性もあるので、踏破できない設定にして置いたほうが良いであろうということになったのだ。
・
・
・
・
― ― ― ― ― ― ― ―
全ての方針が決定したあと、リューはダンジョン最下層のダンジョン核を設置した部屋に転移し、ダンジョン核を操作し、ダンジョンの構成を変更した。
100以上ある階層全てについて細かく設定していくのは結構ホネの折れる作業であったが、なんとか設定は終わった。
各階層の状態をリューがざっと見て回り、OKだろうと言うことで、再び初心者向け冒険者のダンジョン研修が再開されたのであった。
― ― ― ― ― ― ― ―
次回予告
リューに、暗黒街から刺客が?!
乞うご期待!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます