第12話 狩りは片手間

今日も、リューは日課である素材の売却を終えた後、街の外に出て狩りをする予定である。

 

ただ今日は、ダンジョンへ行く前に、ゴブリンの討伐をしていく。

 

ゴブリンは1匹なら一般人でも倒せる魔物であるが、数が多くなると難易度が上がる。

 

大規模集落となり、4桁に届くような数のゴブリンが確認されたとなると、高ランク冒険者や騎士団が出る話になってしまう。

 

通常は、そこまで大きくなる前に討伐されるものなのだが、森の奥深くなどで偶々発見が遅れると大規模化してしまう事があるのだ。

 

だが、そのような大規模集落であっても、リューにとっては片手間の“ついで仕事”に過ぎない。

 

リューが“神眼”を発動する。

 

一瞬にして、森の中のゴブリンの集落の場所を捉える。

 

転移でそこまで移動する。

 

リューの身体能力ならば素手で数百匹のゴブリンを蹂躙する事も可能であるが、そんな事をしていては時間が掛かってしまうので、リューは“時空魔法”を使ってまとめて処理してしまう。

 

集落の中の全てのゴブリンの所在を捕捉する。

単に居場所だけでなく、体内の魔石の位置までも神眼によって把握できる。

 

そして、次の瞬間には、全てのゴブリンの魔石を亜空間に転移・収納してしまう。

 

魔石がないと魔物は生きていけない、魔石を抜かれた魔物は即死してしまう。一瞬の内に、集落内のすべてのゴブリンが死体に変わったのであった。その数、千体に近い数であった。

 

魔石と同時にゴブリンの討伐証明部位である左耳も次元断裂を利用して切り取り、全て亜空間に収納してしまう。

 

生物を含むあらゆる物質について、その一部分を亜空間に収納し、その亜空間を一度“閉じる”事で、どんな物質でも切断できてしまう。

 

この世界とは違う、別の次元の世界に切り離されてしまうのだから、次元を超えて存在できる能力があるモノ以外は、すべて切断する事が可能なのである。

 

亜空間に収納して、瞬時に閉じてまた開いて開放してやと、あたかも物質が瞬時に切断されたかのように見える、「次元斬」などとも呼ばれる技術である。

 

魔石と討伐証明部位はすべて亜空間に切断収納してしまったが、それ以外のゴブリンの身体は素材としては特に利用する部位はないので、そのまま放置していく事にした。

 

 

 

 

本来なら、人間でも魔物でも死体は埋めるなり燃やすなり処理する事が推奨されている。アンデッド化する事を避けるためである。だが、今回は後から来た冒険者に任せてしまう事にしたのだ。後から来た冒険者達は、討伐証明部位も魔石もないゴブリンの死体の山を処理させられる事になるわけである。

 

リューは、今回のゴブリンの大規模集落の討伐依頼を、C~Dランク冒険者のパーティが受けた事を知っていた。この冒険者達は、レイドにも参加しリューを置き去りにした者達でもある。タダ働きをさせてやるのに躊躇いは必要ない。

 

もしそいつらが死体の処理をサボって行わないようなら、リューがすべての死体を亜空間に瞬時に収納してしまえばよい。後で死体処理をしなかった連中の部屋にでもすべて詰め込んでやるつもりであった。

 

 

 

 

ゴブリンの殲滅を終了した後、リューは、集落の奥に、人間の女が数人囚われているのも確認していた。

 

ゴブリンは人間の女を使って子供を産ませる事ができる。そのため、ゴブリンは人間のメスをみつけると攫って集落に連れ込み、閉じ込めて犯すのだ。

 

そのため、人間、特に女性には極度に忌み嫌われる魔物なのである。

 

囚われていた女性達は保護する必要があるが、リューの神眼によって、討伐依頼を受けた冒険者達が近くまで来ている事が既に把握できていたため、それも彼らに任せてしまえば良いだろうと判断し、リューはダンジョンの中に転移していった。

 

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ダンジョンの中でも、やる事は変わらない。

 

神眼を使えば迷宮の構造も、そこにいる魔物の位置も種類も、その体内構造さえも把握できるのである。

 

リューは、ダンジョンの中に入ると、その階層にいる全ての魔物の魔石を転移で抜き取ってしまい、続けて魔石を抜かれて即死した魔物の死体も別の亜空間に収納してしまう。

 

一瞬の作業で、階層内の魔物の殲滅・収納が完了してしまうのである。

 

※一度、亜空間収納に、魔物を殺さずに生きたまま収納してみた事があった。亜空間の中は時間が止まっているので中で暴れたりする事はないのだが、死ぬわけではないため、収納から出すとまた暴れ始める。収納から出した後、いちいち殺す必要があるのだ。買取カウンターにいちいち殺しながら提出するわけにも行かないので、以降はやはり先に殺してから収納する事にしたのであった。

 

 

 

 

このようにして、リューにとってはダンジョンでの“狩り”も一瞬で終わってしまう。

 

何フロアか狩りを続けても、かなり深い階層の、モドキではない本物の竜種ドラゴンを狩っても、数十分から1~2時間で終わる簡単な仕事である。

 

ダンジョン自体は、かなり大規模で危険なものとなっているのだが、毎日こうしてリューが数フロアずつ魔物を間引いているので、魔物が外に溢れ出てきてしまう事なく済んでいるのであった。

 

リューは一応、低ランク冒険者達のために、1~3階層程度までは狩りをしないようにしていた。浅い階層にはあまり危険な魔物はいないので、新人冒険者などにはちょうど良い程度である。

 

こうして、ダンジョンはリューのおかげで適度にコントロールされた状態となっているわけであった。

 

 

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次回予告

 

愚かな冒険者達の最期


乞うご期待!

 

 

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