第7話 冒険者に絡まれるテンプレ的展開?
「リュージーンさんは、昨日、Fランクになったんですよ!」
絡んできたゴジにレイラが言う。
「Fランクって、初心者レベルじゃねぇか!
……って、よく考えたらオメエ! 生きてたのか?!?!」
「ダンジョンに置き去りにして殺したはずなのに、か?」
「お、オメエが、逃げ遅れただけだろうがっ!」
ゴジはレイドが終わった後、疲れたと言って宿に帰ってしまい、翌日も一日寝ていたため、その後の騒動を知らないのであった。
だが、ゴジはレイドに参加してダンジョンでリュージーンを置き去りにした冒険者である。もちろん、ただで済ませるつもりはないリュージーンであった。
ゴジは冒険者としての活動歴は長い。新人冒険者を犠牲にして生還してきた事も、実は一度二度ではない。
この街の古い冒険者は、新人や弱いものを犠牲にして生き残ってきた者ばかりとも言えるのだ。(それ故、他の街に比べて、この街の冒険者はあまり新人が育っていないのであったが。)
「リュージーンさんはダンジョンから自力で生還したんです! 昨日のランクアップ試験では、ヨルマさんに勝ったんですから!」
「はぁ? オールゼロのリューがヨルマに勝ったぁ? 信じられねぇが、本当なら、手加減して勝たせてもらったんだろ、ヨルマに金でも握らせたのか?」
「昨日の模擬戦見てないから知らないんです、リューさんは凄い冒険者になったんですよ!」
「凄い冒険者ぁ? コイツがか?! 面白いジョークだな。なるほど、賄賂で試験に受かって、調子に乗って早速討伐依頼を物色してるってわけか! やめとけヤメトケ! 欲かかねぇでこれまで通り薬草摘んでろや! だいたいランクアップしたって、やっと最低ランクのFになっただけじゃねぇか」
ゴジはリューの肩を突き飛ばそうとした。だが、いつもなら簡単に吹き飛ばされて倒れるはずのリューが何故かビクともせず、逆にゴジが後ろに弾かれる事になってしまった。
「オマエ程度が立派に冒険者をやれてるんだ、何も問題ないだろう?」
「テメェ……『能無し』が調子に乗って舐めた口聞いてんじゃねぇぞ?!」
ゴジはいきなり拳を飛ばした。
ゴジは大男というわけではないが、それでもリューよりは大きいし腕も太い。
リューは、16歳の少年としては普通だが、冒険者としては華奢で貧相と言わざるを得ない体格である。
そんな体格差で殴られれば当然リューが吹き飛ぶように思えるが……
ゴジの拳はリューの顔の前でピタッと止まった。リューが手で受け止めたのである。リューのどこにそんな力があるのか、不思議な光景であった。
昨日の模擬戦を見ていた冒険者達は、巻き込まれたくないとその場から離れていった。
ゴジの腰の入ったパンチを片手で受け止めて平然としているリュー。このままゴジの拳を握り潰してやろうかと思ったのだが―――
しかし、瞬間的に危険を感じ取ったのか、ゴジは慌てて拳を引いた。さすが、長く生き残ってきたベテラン冒険者である、危機察知能力は高いようである。
「ギルド内で暴力は禁止です! 謹慎処分になりたいんですか?!」
レイラがリューを殴ろうとしたゴジに食って掛かる。だが、リューが何故かそれを宥める。
「大丈夫、話をしていただけだ、なぁ、ゴジ?」
突然別人のような態度を取るようになったリューに言い知れぬ不気味さ感じ取ったゴジ。
理由は分からないが、リューは急に力をつけたのかも知れない。壁を破って急成長する冒険者もたまに居る。
念の為、ゴジはリューを【鑑定】してみたのだった。
実はゴジも鑑定のスキルを持っていた。長く生き残るために、相手の力を知ることができるこの能力は大変有用なのである。自分より強い奴とは戦わないのが長生きするコツなのだ。
鑑定されているのをリューも感じ取っていたが、あえて黙ってさせておく。
結果は
――――――――――――
リュージーン Lv:1
年齢:16歳
性別:雄
スキル:なし
クラス:なし
加護:なし
――――――――――――
「何も変わってねぇじゃねぇか……」
(しかし、それにしては先刻の力はなんだ? )
「ゴジには、レイドで世話になった礼をしないとな。外でもう少し“お話し”しようじゃないか?」
不敵に笑うリュー。
リューに名状しがたい不気味さを感じていたゴジであったが、しかし相手は気弱で無能、オールゼロと言われていたリューである。格下どころではない、最底辺と認識されているような相手に舐められるわけにもいかない。
「いい度胸だ、表に出ろ!」
心配するレイラを手で制しながら、リューはゴジとともにギルドの外に出ていった。
一寸遅れて、恐る恐る二人の後を追って外に出ていく野次馬冒険者達。
だが―――
―――扉を開けた先には誰も居なかった。
リューとゴジの姿は忽然と消えてしまったのである。
― ― ― ― ― ― ― ―
次回予告
以前からリューを虐めていたゴジに復讐
乞うご期待!
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