足を斬られてダンジョンに置き去りにされた少年、強くなって生還したので復讐します【無名版】

田中寿郎

起動編

第1話 足を斬られて置き去りにされた少年

この作品は、既に公開されている


『足を斬られてダンジョンに置き去りにされた少年、強くなって生還したので復讐します(習作2)』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054922300995


の通常版のテスト版です。ストーリーはまったく同じものとなります。


上記作品は戯曲風(台本風)の書き方がされております(つまり台詞の前に名前が入ります)が、この作品は同作品の“戯曲風”を廃止して通常の小説風にしてみたものになります。


ただし、完全戯曲風で書いてある話は手を入れますが、それ以外はセリフから名前が単純に削られるだけとなります。


セリフの前に名前があるかないかの違いだけですが、それぞれの書き方に合わせた文章の工夫が必要になります。特に、複数の人間が登場すると、誰のセリフか分かりにくくなる場合がありますが、そのための修正、改稿は入れない予定ですのでご了承ねがいます。


分かりにくい場合は、上記オリジナル版を参照してみて見て下さい。


――

――――

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――――――――――――――――


ダンジョンの中にドラゴンの吠声が響いている。


数名の冒険者達が声のする方向を警戒するように剣を構えている。


そこに、男二人に引きずられるように一人の少年が連れられてきた。


「おら! さっさと行け!」


ゴジが少年を突き飛ばす。


冒険者達が押し出されてよろけた少年を受け取り、最前列へと引きずって行く。


「俺は荷物運びポーターとして雇われただけだ、魔物と戦うのは契約に入っていないはずだぞ!」


少年が暴れる。しかし周囲の者に強く押さえられて動けない。


少年の名はリュージーン。今回のダンジョン攻略レイドで荷物運びポーターとして雇われた最低ランクの冒険者である。


少年を引き摺ってきた二人組の男の一人、ゴジがニヤニヤしながら言う。


「うるせぇな、緊急事態だ、仕方ねぇだろ。少し時間を稼いでくれればいいんだよ」


二人組のもう片方の男が言う。


「仕方ねぇな…」


この男はヨルマ。このレイドのリーダーである。


そのヨルマがアゴで周囲の冒険者達に合図する。


「おい!」


冒険者の一人が頷き、リュージーンに近づくと膝裏を剣で斬りつけた。


「ああ!」


倒れるリュージーン。


「な、何を・・・!?」


「お前が臆病風に吹かれて逃げ出さねぇようにだよ。歩けなければ逃げられねぇだろ?」


「別に魔物と戦えとは言ってない。これを使え、魔法障壁を発生させる魔道具だ」


魔道具をリューのほうに放り投げるヨルマ


「魔導砲の魔力チャージが終わるまで、そこにとどまって障壁バリアを維持してくれればいい、簡単な仕事だ」


「魔力ゼロのお前にはそれくらいの仕事しかできんのだから、しっかり働けよ!」


「チャージが終われば魔導砲でドラゴンなど一撃で倒せる」


「ドラゴンを倒したらその後で治療してやる、せいぜいしっかり食い止めておけ」


足の筋を切られて動けないリュージーンを残して、冒険者達は全員後退していった。


ドラゴンの吠声が響く。悲鳴をあげながら這って逃げようとするリュージーンはなんとかヨルマが放り投げていった魔道具を拾い、慌てて起動させようとした…



  * * * *



リュージーン一人を残してドラゴンの居る場所から離脱してきた冒険者達。


「急いで撤退するぞ!」


「おいヨルマ、『魔導砲』を使わないのか?!」


「魔導砲ってなんだ? この煙管の事か?」


「……リューを騙したのか?! ヒデェな!」(笑)


「結界石は本物だ、起動すれば魔法障壁バリアが発生してしばらくは持ちこたえられるだろう」


「バリアが切れたら……? ドラゴンが追ってくるんじゃないのか? 早く逃げないと!」


「バリアが切れると同時に結界石の下に組み込んだ自爆石が作動するようになってる。ドラゴンが出てこれないように出口を爆破してしまう必要があるからな」


「それで出口は塞げるのか?」


「ああ、かなり強力な威力の自爆石だ……リューも苦しまずに死ねるだろうさ」


「お優しい事で……」


ヨルマの言葉に一人の冒険者が呆れたように言った。


「それに……ないとは思うが、万が一、生きて帰られて訴えられても迷惑だからな」


肩を竦め顔を顰める冒険者達。


「時間がない、さっさと撤退するぞ!」


男達は全員急ぎ足でダンジョンから撤退して行った。




  * * * *




なんとかダンジョンから脱出し、ヨルマ達は冒険者ギルドに帰り着いていた。


ギルドの中にはヨルマとゴジ、他数名の冒険者、それにギルドマスターのダニエルが居た。


ダニエルがヨルマからレイドの結果報告を受けている。


「ダンジョンの中にはやはりドラゴンが居たか!」


地竜アースドラゴンの一種、おそらくクロウドラゴンだ。しかも居たのは結構浅い階層だった」


「もしアースドラゴンが地上に出てきたら大変な事になる。一匹だけなら、何とか討伐できるかもしれない。しかし、複数であったら、間違いなく街は壊滅するだろう」


「階層の出口は爆破してきたから、しばらくは出ては来れないだろう」


「そうか…よくやってくれた、早急に領主に報告し、国から軍隊を派遣してもう事も検討する必要があるだろう」


そこにゴジがニヤつきながら口を挟む。


「ポーターの少年が一人、その身を捨てて出口を塞いでくれたんだ。彼の尊い犠牲のおかげで街ハ救ワレタワケダ。感謝シナイトナ」


「Gランク冒険者が一人ダンジョンで死んだところで、大した問題ではない」


冷たく言い放つダニエル。


だがそこに、一人の少年が扉を開けて入ってきた。ダンジョンに置き去りにしたはずのリュージーンである。


驚くヨルマ達。


「リュージーン! オマエ…生きていたのか……」


ヨルマを睨みつけるリュージーン。


「最初から捨て石にするつもりで連れて行ったのか?!」


ヨルマはまさかのリュージーンの帰還に絶句した。




  * * * *




のどかな片田舎という表現が似合う街ミムル。


その街の東に、十数年前、ダンジョンが発生した。


これといった主要産業のなかった街は、資源としてのダンジョンを歓迎し、積極的な攻略はしなかった。


ダンジョンを破壊せずに利用するのは細心の注意が必要である。だが、ミムルの街はそのノウハウも知らず、冒険者が気まぐれにダンジョンに潜るに任せていた。


やがてダンジョンはなぜかいびつな成長を遂げ、浅い階層に高ランクの魔物が溢れるようになってしまったのである。


徐々に冒険者達はダンジョンの魔物の “間引き” に手こずるようになり、増えた魔物はダンジョンから出てきて街の周囲を闊歩し始める。


魔物による住民の被害が多発するようになり、ついに貴族の関係者にまで被害が出たところで、やっと領主からダンジョンの攻略命令が出されたのであった。


それを受け、冒険者ギルドではレイド(複数パーティ合同による大規模攻略作戦)が計画されたのであった。




  * * * *




16歳の少年、リュージーンは、薬草取りを主な仕事として生計を立てているGランク冒険者であった。


本人は必死で努力しているのだが、何故かレベルがまったく上がらず、ランクの高い依頼が受けられないまま、薬草取りだけを続けて3年が経っていた。


実力が足りない事を自覚している少年は、レイドにも参加するつもりはなかったのだが、ポーターとして半ば無理やり駆り出されたのであった。




  * * * *




そして開始されたダンジョン攻略レイド。多少苦戦はあったものの、順調に攻略は進んでいったのだが、十層ほど進んだところでドラゴンに遭遇してしまったのだ。


這竜クロウドラゴンの危険度はA。一匹でも軍隊一個中隊で退治できるかどうかという凶悪なモンスターである。それが無数にダンジョン内を彷徨いているのである。


正直、そこまでの想定をしていなかった冒険者達。即座にヨルマは撤退の判断をしたが、ドラゴンから逃げ果せるために、ポーターとして連れてきた少年を犠牲にする事にしたのである。



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


悔しかったらランクを上げろ


乞うご期待!



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