Gloves

木村文輔

序章

第1話 赤い海

 赤い血溜まりの中に浮かぶ人間は、ただ固く瞼を閉ざしていた。

 喉の奥が焼ける心地がする。荒く呼吸を繰り返しても、ひたすらに息苦しい。肺が酸素を拒否しているかのようだった。


 それでもただ立ち尽くし、目の前に横たわる現実を凝視することしかできないのだ。


 認識してしまったから。


 血の海に沈む遺体。倒れ伏したそれが、“相棒”であると、

 理解してしまったから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る