Lump Of Iron

@ojyasu21

前世の記憶

前世の記憶は鮮明に頭の中に残っている。

俺は孤独な存在で更に不器用だった。


自分の考えにそぐわない事に首を縦に振ることができず、諍いの種をばら撒くことが常だった。

そんな自分が手に入れたものは成長の過程で得た高尚な理念などというものでは無く、安い自身の存在価値を確認する事というただの社会的弱者の鑑というべき呪いを手に入れたのみであった。

それは大変わかりやすい一般大衆の行方というものだった。


自分は自身の使命を全うする為に生まれてきたはずだった。しかしその使命とはなんだったかは今思い返すことができない。

ただ目の前にある山のような仕事を殺戮し続け、雄叫びを上げ、酒を飲むという自身の壮大な夢の割には矮小な存在になってしまった。


自分は自分の成果や言うにも恥ずかしいが功績といったものを他人に語ることができない。それが不器用であるという所以である。



ある時、自分がどういう存在であるかと問われた時があった。何故かそんな事を考えていた事はないのだが、自身のことを「鉄の塊」と答えていた。

曰く前に立ち、被弾を厭わず仲間の事を助けるかと思いきや壁を見つけると突進して壊す。そんな存在ということだった。


それは不器用な男が述べた唯一の主張であった。

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