カタコト!?

『…おはようございまーす…』


「おはようございますヤエさん!」

「お、おはようヤエちゃん…」


Q2ちゃんの様子がおかしい。


『…なんかわたし寝癖とかすごかったりします??』


「そんなことないですよ?」

「うんうん、そんなことない。」


「おかしいのは師匠の態度だけ。

…って痛!?」


そう言ったナビさんは鋭くにらまれ、足をふまれていた。


何かあったんだろうなとは思うけど、気にしてもしょうがない。


「まぁまぁヤエちゃん、朝ごはんでも食べながら今後の話をしようじゃないか。」


『朝ごはん!!』


昨日のファンブルガーがおいしかっただけに期待が高まる。


「はい、ナビさん!」

「はい、師匠!」

まるで長年組んできた芸人かのように息のあったコンビネーションで瞬く間に朝ごはんが用意され…


『??これは??』

とても見覚えのある食べ物だ。


「朝といったらこれ!おこぎとソイ汁!あと魚。」

「私たちがつくりました!」


そんな生産者の声みたく言われても…


『…なんか私の世界の食べ物にそっくり。』


「わたしの世界って言い方は傲慢だねぇ、ヤエちゃん。

ヤエちゃんだけの世界じゃないぞ?」


『そう言った意味で申し上げたのではないです。』


政治家みたいな釈明をしてしまった。


「冗談冗談!ごめんよ!いやね、異なる世界からきたっていうのに私らの見た目は似てるでしょ?同じ人として。」


『まぁ人ってくくりなら似てますね、角とかがあるわけでもなく、耳が長いとかでもなく。』


「つまりそういうことだよ。似たような人種なら似たようなものを食べるってことよ。」


『一理ある…のかなぁ?』


「そういうものだよ。ともあれ、ナビ作のおこぎとソイ汁は絶品だよ!」


「師匠、おかわりします?」


「まだ食べてないよ!!」


小気味いい会話だ。


『じゃあ早速…

頂きます!』


「はい、どうぞ〜」


『………』

この味はどう考えても、お米だし、味噌汁…

なんだけど…


「…おいしくないですか?」

心配そうにナビさんが覗き込む。


『あ、すみません!逆です逆!

あまりにも知ってる味に似ていて…』


「おいしければいいじゃない。

それより…」


「食べながらでいいから今後の話をしようか?」


真面目な顔でQ2ちゃんが言う。


「状況を整理しよう。」


ズズッ

『はい』

汁うまぁ…


「ヤエちゃんは昨日、目が覚めたら街の横の森にいた。」


『そうですね。家にいたはずなのに、目が覚めたら森にいました。』


「そこに偶然、ナビとギャランとジーポがきた。」


『男性2人は何言ってるかわかんなかったですけどね。』


「まぁ、ここにきたばかりだったから私の魔法もなじんでなかったんでしょ。

で、うちのナビが声をかけた、と。」


『ですです。』


「で、とりあえずエンユードに連れてこられ、身元不明だから役所で登録した、と。」


『はい、そうです。』


「で、住む所も働く所もないから斡旋所でも登録してきて、とりあえず我が家にきた、ってのが昨日までの流れだよね。」


『はい。でもこんな状況プラス身元不確かなわたしが働かせてもらえるんですかね…』


「その点は心配しなくても大丈夫だよ、こういってはアレだけど、エンユードの前身は流刑地だから細かいところは気にしない風土ができてるから!」


『それはそれで心配なんですが…』


「まあまあ…そんなに心配しなくてもナビがなんとかしてくれるよ、ね?ナビ?」


「まかせてくださいよ!ギャランさんもジーポさんも私が育てました!抜群の体制でヤエさんの就職活動をサポートします!」


『…あ、はい』

異世界まできても働くのかぁ…


『あの〜、すっごくダメもとで聞きますけど、なんか冒険者的な職業とかあったりします?』


「…ヤエちゃん」

「…ヤエさん」

「「それはない」」


「ああいうのはなろうとしてなっちゃダメだよ!ならず者ばっかだし!」

「そうですよ!あの方達のおかげで苦労することも多いんですから!」


二人して否定的な意見…

よっぽどダメらしい…


「やっぱり地道でも地に足つけた仕事をすべきだとも思うよ、私は。」


『え、じゃあQ2ちゃんの仕事は…?』


「私は一応この街の管理人兼魔法の研究者でもあるからね、公務と言えるよ。」


『じゃあナビさんは?』


「私は師匠の助手兼職業斡旋所の職員でもあるので私も公務ですね。」


『じゃあわたしもそういう仕事につけないですかね?』


「…ヤエちゃん」

「…ヤエさん」

「「それはない」」


「ヤエちゃんが悪い子とは思わないけど、ぽっと出の人に公務をまかせるほどエンユードもお人好しではないんだよ。」


「そうですよ!ギャランさんもジーポさんも違うお仕事をされてますし。」


異世界にきてまでも仕事をしなきゃいけないし、遠回しにまだ信頼されてないと言われメンタルブレイクしそう…


『うぅ…

仕事はおいおい考えますぅ…』


「いきなりわけわからない世界に放り込まれて、仕事を探せとか言われても…てなるから気持ちはわかるけどね。」


「ですね、そしてこういうのは同じ境遇の人から話を聞くのが一番参考になるかもしれないので、ギャランさんとジーポさんがお話にきてくれるよう昨日頼んでおきました。」


『…昨日は何言ってるかわからなかったけど、今日は大丈夫ですかね…?』


「!!」


「だ、大丈夫だよ?私の魔法だよ?」


『信じますよ…?』


「ダイジョウブダイジョウブ」


…大丈夫かな


ーーーーーーーーーーーー


朝ごはんを終え…


「あ!ヤエさん!お二人がきましたよ!」


『あ、はい!』


「ハーイ、ヤエサン、コニチワー。

キョウハヨロシクタノムヨー」


『!?』

わ、わかるけど…

なんでこんなカタコトちっくなの!?


「…師匠…

なんかヤエさんがすっごくびっくりして固まってるけど、昨日の失敗ってどんなんです?」


「えーとね…

男性の声が全部カタコトに聞こえちゃうやつ★」

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