転生勇者は事なかれ主義

夢のまた夢

エピローグ

気づけば僕の体は勝手に動いていた。

ただ傍観していれば何事もなく済んだだろうに。

足が進んでいたのだ。

急いで線路に降り、泣きじゃくる子供を母親の待つプラットフォームへ投げ飛ばす。

もう少し優しく投げれば良かったなどとこんな状況になってまでそう思ってしまう自分に嫌気がさした。

僕はいつもそうだった。


今だって子供の心配をしたのではないのだ。

緊急時とはいえ子供を投げ飛ばした自分を見ている人たちがどう思うか........批判されないだろうか........

人の目を、世間体を気にしてしまうのだ。

嫌な頼みごとをされても、面倒な事を全て押し付けられても相手からどう思われるのか気になって、断る事が出来ないのが僕だった。

あぁダルイ........今まで誰かの事助けてばっかだったな........頼まれて断れなくて........

こんな現場に居合わせなければ、誰かのために死ぬなんて馬鹿な事しなくて済んだのに........

僕が勉強もスポーツも全部できない人間ボクだったら少しは頼まれる事も減ったのかな........

あぁ........今更だけどやっと気づいた。優れている事は必ずしも良い事じゃないな........

人より優れてるから頼られて期待されて面倒ごとに巻き込まれて........

僕だけが不利益を被る........

生きてればこれから順風満帆な人生だったんだろうけど........

こんな世界じゃ疲れるだけだ........

もしも生まれ変われたら—————————今度こそ平凡で........

弱い人間に........なれますように........


次の瞬間、僕の体は宙に舞った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る