第42話
機械技術の向上
オートマシン(作業用の自動機械)など本来の未来とはかけ離れた世界になるという結果が出ていたのだ。
少しして
また俺は
あの時代へ戻る。
そして宿屋に入る。
「おう!松本殿」
坂本龍馬が声をかけてくる。
本来の時代ではこの場所にいない人物。
俺松本良順は、このままこの先の未来を見届けてみることにした。
「ヒサ」
案の定こいつは俺が未来から来た者だとわかって話しかけてきたようだ。
「裏口から出よう」
もう情報を得てる事の核心を話す俺と坂本龍馬が向こうから接してくるとは思わなかったが……俺のこの時代に来たという興奮を見抜かれたかもしれない。
そのくらいの細い道は、向こうの部屋のほんの独り言に手が伸びるぐらいの絶妙な狭さだった。
どうやらこれを覗き見るためにあいつはわざわざこのためだけにここへ戻ってきたようだった。
俺は坂本とふたり、その覗き窓から桂昌院の会見を見ることになる。
俺の知ってる通りの流れだ。
そして最後に流れ星……あ、いやこっちの世界のアレはまさか長州の義挙の裏の事を知る最初のきっかけとなった幕末モノは【幕末浪漫】だ。
坂本にこの『歴史』の話をした時に俺は、桂小五郎いやこの世界では『坂本龍馬』がこの立場となっている。
と教えてやった。
知ってたら助太刀をやりたいなどと言うだろう、なにせ桂昌院の会見は俺の思ったとおりに躓いたからだ。そしてその先に在るのが彼の処刑であるのだから……。
そこで坂本には地租改正で土地を強制的に取られ抵抗したらそれこそ理不尽に殺せる社会という仕組み、その不条理を彼はどう見るだろうか?
そしてこの『逆行』は──この『平行』の世界を『改変』させる力となるだろうか。
「俺は、この世界を変える!」
「世界をもし変えた場合どうなるのだ?」
坂本が訊く
「『世界が変われば未来も切り替わる』だけど未来ってのは不確定だから切り開く必要があるんだよ。」
「……そうだな、存在への確証は確かにほしい」
* 坂本龍馬に異人館の応接間の部屋で会談をするのは俺と桂のはずだった。
まさかついでについてきた『世話役』として有名な白河を通してくるなんて俺は露程も思わんかったよ。まあ実際はみよ(妻の愛称)
を連れてこなかったせいも少しあるが。でもまさかそれが坂本と桂を結び合わせるなんて思いもしなかった、いや……そもそもそのきっかけは『歴史』にはなかったことだ……。
『あの瞬間』から全てが始まったのだ。
「坂本さんはもしこの革命が終わったらどうするつもりで?」
「そんなの決まっている。色んな人が笑顔で幸せになる世の中作りさ……その為に必要なことは全てやるつもりだ」
(なるほど)
と俺は思った。
『今は』
それが坂本の思想と言うことなのだろう。
でもこの時はこの会話を聞き終えてからの事だが。
「あの頃は天狗や調子に乗ってたってアホみたいにいいまくってたものな龍馬(笑)」
俺の息は酒くさいのかという程みんな鼻をつまんで堪えてくれるから困る。
まあ慣れて来たら寧ろこの臭いが懐かしいんじゃねえかとは思うんだけどね。
「……いや、全然天狗になんてなれなかったさ」
坂本はちょっと照れたように笑った
それはまだ少年っぽさを少し残してるような笑い方だった。
でもこの時の笑い方はすこし俺をドキドキさせる変な物だったのかもしれない。
*
(あれ?そういえばこの【坂本竜馬】は……この世界での【桂小五郎】なのだ。だからカンパニーを作る思想を本人は1度たりとも語っていない)
(つまり桂小五郎【役】を彼に強いるのが成功したということなのか?)
だとするなら
これは『平行世界』に『この世界は支配』されている?
このままだと
『本来』の『史実上の未来』にはならない。
「なああんた……まつ──」
(確かにその山川の挙兵までこの国が生き残る前提で守られるとは思ってたし、この地でも思ってはいたが……まさか俺のした介入がどう使われたのかによって本来の『歴史』では生まれなかった奴が生まれるとしたら──)
この世界は神様という存在を必要としたりはしないのかもしれないけど、俺はこの時とてつもない程の頭痛を起こした。
(存在否定だ)
(この『幕末』の【歴史】をねじ曲げようとする行為自体が、俺が今居るこの時代自体が──)
存在を否定するという訳である。
「坂本さんどうした?」
「松本殿……あんたは一体?」
「だから俺は未来からこの時代というかこの『世界』に来た
『未来人』、そして『松本良順』は未来の俺に与えられた『名前』に過ぎないんだよ」
と坂本龍馬に説明をする。
そしてここで今あった話に再び戻るのだが。
「ああ……大丈夫だ。スゴくいい感じだ」
何がいいのか、 そして今さらだがこんなにうまい酒を毎日すすっても金が尽きないなんて随分美味い話だ、と俺は自問自答をした。
(それにしてもやっぱりおかしいような)
「さっきから坂本さんはあまり楽しそうじゃねえな。どうした?」
「……実はな、俺はあんたをあの松蔭寺で『見た』んだよ。でもあんたはあの寺に居なかった」
「……」
そうだ、それは桂昌院さんの会見の間に到着する『時間』を調整しようと思った時に『未来』に戻ったんだ。
(そうかこの【未来】だと未来を知っているからなのか『入れ替わった』俺達を知らないんだよ坂本さんは──)
「俺はもしかしてあんたは人であって人でないものかと思っていたよ」
「あははは!これは面白いことを言う!俺は幽霊か何かなのか?幽霊は未来の世界では『プラズマ』とか『足は影になったり写りにくくなってる』と解明されつつあるがな」
「そうなのか!勉強になるぞ」
と龍馬は答える。
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