第2話 眼科医の彼
最近、上司から怒られることが多くなった。それは、女性社員たちが私に、いろいろな情報を共有してくれなくなったからだと思う。
この前は、会議時間が変更になって、上司は、別の女性に私にも伝えるようにと指示したらしいんだけど、その女性はその指示を無視したんだと思う。会議が始まって、私が入ってこないから勤務態度が悪いと上司からさんざん怒られた。
私は聞いていないと言い続けたけど、その女性は言ったと子供の喧嘩みたくなっちゃった。そして、周りの女性たちは、楓って、いつも、そういうこと言ってばかりで困ってるんですと、口を揃えて上司に言うもんだから、上司は、嘘つくなとかえって怒らせちゃった。
また、別の日には、お客さまが来たという連絡がなく、1時間もお客さまを受付で待たせてしまい、上司から怒鳴られた。聞いていないと言っても、また嘘を言うのかと取り合ってくれないの。そのうち、ボーナス査定が最悪になって、ほとんどもらえなくなった。受付の女性もぐるなのかしら。
そして、会議の途中で、プレゼンしていた女性のPCがモニターに映されていて、ポップアップが上がり、そこに、私が男癖が悪いし、嘘つきだし、その割に上司にはいい顔ばっかりで、本当に嫌な女って、チャットに書いてあって、何人もが、そうだ、そうだと言っているのが見えた。
たぶん、女性社員の大半が、私のこと、チャットで悪口言っているのね。だから、みんな無視するんだわ。なんか、この会社、敵ばかりに見えてきた。昔は、とっても楽しく仕事していたのに。
こんな中、高宮くんから距離を置きたいと言ってきた。会社であまりに私の評判が悪くて、同僚から、そんな女性と付き合うのは良くないと言われたらしい。私はそんな人じゃないと言ってくれると思ったのにショック。
彼からは、私がいくらDM送っても、返事が来なくなってしまった。なんで、私が困ってるときに助けてくれないの。優しい人だったじゃないの。多分、同僚だけじゃなくて、多くの女性から、聞きたくもないような嘘を吹き込まれているかもね。私の気持ちとは別に、高宮くんとは別れるしかなくなった。
でも、男の人に慰めて欲しかったから、出会いサイトで男性を探したら、眼科医をしている2つ上の男性と知り合うことができた。とっても、優しくて、若いのにお金もたくさんあるようだし、こんな人だったら、優しく、私の悩みとか聞いてくれて、結婚しても幸せになれるって直感で思ったの。
彼は、急患とか少ないようで、定時には仕事は大体終わったので、週に1、2回はレストランで一緒に飲みながら夕食を一緒にするような生活になった。私が行ったこともない、高級レストランとかに連れて行ってくれて、ワインの種類とかもいっぱい知っていて、年はそれ程違わないのに、大人の男の人って感じで、私は夢中になったわ。
だから、2ヶ月経った頃には、食事の後は、私の部屋にきて、朝まで一緒にいるようになった。彼の家は、少し遠くて、私の家が病院の近くにあったから、結局、私の家で過ごすことが増えたって感じね。
彼は、料理も上手なの。金曜日とかに泊まりにきて、土曜日、日曜日も一緒に過ごすことが増えたけど、夜の料理は彼がいつも作ってくれた。掃除もしてくれるし、結婚するには最高じゃないかしら。
彼との幸せな日々が続いた。やっぱり、女と仲良くするより、男性に可愛がられる方がいいわ。エッチした後に、ベットの上で彼と一緒に写真も撮った。二人だけの秘密写真だねって、二人だけの秘密が増えるのも楽かったわ。
そして、旅行とかにもいっぱい行った。会社では、相変わらずいじめられていたから、そのストレス発散だったのかもしれないけど。月に1、2回、温泉旅行とか行って、家族風呂とかで彼と一緒の時間を過ごした。温泉街では、彼の腕をぎゅっとして、思いっきり近づいて歩いたり。
ただ、ある日、防犯業者という人が訪問してきたの。怪しいから、今忙しいって断ったんだけど、何度もきて、何かアンテナみたいものから、ピーピー音がしていて、盗聴器があるらしいと言ってきた。
そんなことはないと思ったけど、一応、調べてもらったら、監視カメラ、盗聴器とか10個以上出てきた。どういうことなの? この部屋は彼しか入っていないと思うんだけど。
それとほぼ同じ頃、大学の時の友人から、私の上半身が裸な写真が出回っているって連絡がきた。どう言うことかと思い、サイトで見ると、確かに私で、笑顔で、恥ずかしそうに、ベットの上で上半身が裸でいる写真が載ってる。もっと悪いのは、私が寝ていて、下着を全く付けていない全身の写真や、下着がない下半身をアップした写真とかも載っている。ひどいわ。
彼を呼び出し、問い詰めたら、お前のようなレベルの低い女と付き合ってやったんだから感謝しろよと言われ、文句があるなら別れてやるって、部屋を飛び出していった。そんな人だったの?
警察にも行こうかと思ったけど、そうしても、ネットの写真は消せないから、どうしていいか分からなくなっちゃった。
そして、会社では、誰か女性社員がばら撒いたんじゃないかと思うけど、私の卑猥な写真が出回り、上司から呼び出された。
「もう、庇いきれないよ。当社の品位を落としたと言うことで、諭旨解雇となった。だから、文句もあるかとは思うが、自主退職をしてもらいたい。」
「私が悪いんですか?」
「あなたが同意の上で写真を撮ったんでしょ。あなたが悪いんです。」
「そんな・・・」
そう言っても、廊下とかで男性と会うと、ほとんどの人が、ニヤニヤして私を頭の上から下までねっとりと見てくる。私の裸を想像しているのかと思うと、もう、この会社にいられなくなって、辞めることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます