並行世界の彼女
森川 蓮二
るりこパラレル 1/5
これは市立六坂北高校の生徒なら誰もが知っている当然で平凡たる事実だ。
いや全生徒は言い過ぎかもしれない。
だが少なくとも同じ一年生なら誰でも知っている。
それぐらいに高鷲瑠璃子の名を知らぬ者はいなかった。
ではその高鷲瑠璃子とは何者なのか。
端的に言えば持ちえる者であり才人だ。
成績優秀。スポーツ万能。
おまけに人柄も良く人当たりもいい。
誰にでも優しく、揉め事にも決して怒らずその場を収めてみせる。
見知らぬ人の財布が落ちていれば拾って警察に届け、階段を前に立ち尽くすおばあちゃんがいれば荷物を持って介抱してやる。
善人ならやりそうなことを平然とやってのける。
真っ当なすぎて聖人すぎて近寄り難い。
完璧な彼女。
それが高鷲瑠璃子という人間だった。
対して僕の方は、といえば語るべくもない。
これといって長所もないその辺の石を投げれば当たりそうなどこにでもいる普通の人間である。
そんな奴が高嶺の花とも言える人間と付き合っていることを奇妙だと思うかもしれないがそれが事実なのだから仕方ない。
その自慢の彼女にいま僕は――。
殺されようとしていた。
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