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藍鉄の師は不明である。その弟子・翔覧に対し藍鉄は、私に師はいない、戦場に潜り込んで魔女たちが戦うのを見て覚えた、と語ったという。翔覧はそれを信じなかった。師はしょっちゅうくだらない冗談を言う人だったので。
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まったく誰の記憶にも残らないような、影の薄い弟子だったという説。誰がそんなものを信じるというのか。
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藍鉄には娘がいた。真偽不明の情報だが一応書きつけておく。個人的には虚偽の疑いが濃いと考えている。が、民衆が伝説としてそれを望んだというのは事実である。彼女の死後は翔覧によって育てられたという。なお、その父親は不明とされている。いったい誰がどうしてそんな噂を望んだのだろうか? それすら今の私たちにはよくわからない。
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あと100字で2万字になるところまで到達する。長かった。と思ったが別段そんなことはない。これに関わり合ってた期間はせいぜい2か月がいいところだ。ふと思い出したことに集中的にカクヨムに何かを掲載し始めたのが去年の、2022年の9月頃だった。多分2022年9月20日。いくらか後にずれるかもしれない。それが1年たってこんなものを書いた。ひとつのマイルストーンのようなものになるか。マイルストーン、ほとんど使ったことのない言葉、あってるんだか知らない、まあいいやという適当な気分で使う。全体にそんな風にできている。そうしたものを許容している。
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藍鉄は輝成の来訪に対して言った。
「え、なんか用?」
王族にも対等な付き合いをするための彼女なりの布石だったという考えもあるにはある。
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歴史は学問ではなく物語の一種だった。正確性よりもおもしろさが重視されていてその点で非難されるいわれはなかった。それを批判するつもりでこれを書いているわけではない。そもそもこれを書くきっかけをさかのぼれば10歳を過ぎたころ初めて見た『幽遠の隅』の子供向けアレンジによるところが大きい。
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魔女の力は攻撃・防御・情報処理、いずれも人間が集合したところでかなわない。追いつき追い越すのに1000年に近い時間が必要だった。本当のところもっと時間がかかっただろう。魔女でありながら藍鉄がその時間を縮めた。
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藍鉄は嘘をつきたがる癖があった。しかしその嘘は簡単に見破れるものばかりだった。嘘をつくにしてもきちんとしたものでないようにする、そうした信条をもっているみたいだった。
彼女はおそらく嘘をつくこと自体が目的だったのだろう。それによって人を騙して利益を得ることを求めてはいなかった。
ただただ純粋に嘘をつきたかった。彼女は現実を嫌っていたのかもしれない。検証しようのない仮説。
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恐らく無駄な心配だ。こんなところまで読んでるやつはいない。いたらごめん。
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魔女空白の事態に、第三王子・輝成は六掌・見角とともに新たな魔女の確保に動き出した。それは彼らにとって非常に緊急性の高い仕事であった。
他の人間たちはどうしてそうした動きに加わらなかったのだろうか? 単純にそれ以外にもいくらでも仕事が山積みだったから。
今さっき魔女の確保は非常に緊急性の高い仕事だと言ったじゃないか。その通り、何も間違ったことは言ってない。当時の打庭国は非常に緊急性の高い仕事でいっぱいだった。
よく国の形を保っていられたものだと思う。まあそのあとすぐに崩れてしまったんだけどね。
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『幽遠の隅』の主役は藍鉄ではない。見角と輝成の2人だ。その2人に比べれば藍鉄のセリフはぐっと少ない。10分の1にも満たない程度だ。
大抵の場合、見角にはクールで細身のタイプのイケメン、輝成には明るく元気なタイプのイケメンが配置される。現在に伝わる肖像とは多少食い違うが大衆の持ってるイメージはそれである。
歌劇の主題はあくまで魔女を軸とした2人の主従の対立だ。もっと突き詰めていけば見角の葛藤。実際のところ彼の投げ込まれた状況はそこまで複雑でない。人が思い悩むのにちょうどいいぐらい。
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おそらく最初のうちは輝成も見角も藍鉄に期待していなかったはずだ。他の魔女が見つかるまでのつなぎ、ぐらいにしか考えていなかっただろう。
その評価が明確にひっくり返った、というようなポイントは存在しない。藍鉄は勝ったり負けたりでその生きている間、評価が定まる時期がなかった。
それでも『もしかするとこいつは思ったよりずっと使えるかもしれない』とかすかに思うようになった瞬間をあえてあげるなら白縫戦あたりがそれだろう。
もちろんすぐにまた敗北して失望することになるのだが。そのあたりの評価については藍鉄によって上手にコントロールされていたふしがある。大きな期待を受けることを彼女は望んでいなかった。
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藍鉄が打庭国に登用される数年前に塔都が弟子のうち1人を除名したという記録が残っている。これは公的なもので信頼していいだろう。
その除名された弟子が藍鉄であったという説が提唱されている。藍鉄は塔都と直接戦闘を行っていないがその一番弟子である遥とは2度も死闘を演じている。
損害の量を比較すればその2度とも藍鉄が敗北したと言える。しかしぎりぎりのところで凌いだ藍鉄を、塔都は最後まで攻め切ることはできなかったとも考えられる。
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私たちはすべての情報を必要としていない。むしろ受けとらないことを選択している情報もある。それを強制的に押しつけてくるのは暴力と言ってしまっても構わない、情報の暴力。
現在のインターネットというのはそのあたりのことに非常に無神経だ。知りたくもない情報を身勝手にも張り出している。
広告するのはまあギリギリ構わない、そこのところは許容してやろう。だがその広告の内容をある程度はこちらで制限させろ。いい加減な分析でこちらの受けとりたくない情報を表示するのはやめろ。
普段摂取している情報に近接している場所にこそ、受取拒否を選択している情報は転がっているのだから。
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