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 では見角はどうだろうか? 彼はどの段階で輝成を王位につけるべく動いていたのか?

 あるいは彼がそれを考え始めたのは藍鉄と出会った時かもしれない。巨大な力を自分たちが制御しうると思えた時、より効果的に打庭国を動かすためにはどうすればいいのか、彼は考え始めた。

 実際にはまったく制御しきれなかったのだけれど。

 判断には大抵の場合、誤認が含まれる。そうしてそれで問題がないケースがほとんどだ。問題があった時だけ判断を振り返ってそこに誤認が含まれていることを認識させられる。誤認のせいで失敗したとは限らない。


   ◆


 藍鉄が魔女として評価されている理由のひとつに白縫との戦いに勝利したことがあげられるだろう。当時の絶対王者。

 非常に珍しいことにそれは国同士の対立に関係のない純粋に近い勝負でその戦いにはっきりとだれにでもわかる形で藍鉄は勝利した。敗者である白縫が自らの敗北を明確に記述している。

 もちろんその時代における最強の魔女が白縫であることに異論はないが、それを正面から叩き伏せた戦績から藍鉄の能力に一定の評価を与えている人は多い。

 彼女の重要な局面における勝率は極めて高い。意識して手を抜いていたのだろうか? 今更それを証明することはほとんど不可能だ。


   ◆


 一般の人々の間で、魔女についてアンケートを取ってみたとしよう。藍鉄の名は3位以内に入るだろう。5位以内なら絶対入ると言い切ってしまっていい。

 歴史について研究している人々の間ではどうだろうか? その重要度は多少下がるが、それでも10位以内には必ずランクインしてくるに決まっている。

 魔女の話をする際に私たちはどうしてもその名を外すことができない。


   ◆


 現在9/14、4000字を超えたところ。目標の2万字には遠いが、時間は残っている。

 日に4000字書くのが限界である。それ以上も書けなくはないがペースは落ちるし如実にくたびれる、それは多分文章の方にもあらわれているだろう。案外わからないかもしれない。

 でもまあわざわざさぼる理由があるのにそれを採用しないなんてバカげている。1日に4000字しか書けないものとする。

 逆に言えば1日に4000字書けるわけだ。つまりはあと4日あれば2万字埋まるということ。11月になってからがんばっても――はさすがにきついからやらないけど、10月下旬から取りかかったとしても十分間に合う。


   ◆


 打庭国は険しい地形に囲まれている。攻めるは難いが守るは易い。

 その性質のおかげで彼らは生き延びることができたし、その性質のせいで彼らは滅びることから逃れられなかった。

 といってすべてを地形のせいにはできない。そこにいた人たちによって運命のいくらかは決せられた。

 結果的になくなりはしたけれど、その時代における似たような規模の国と比べれば、打庭国は長持ちした方だ。それが誰かの慰めになるかどうかは知らない。


   ◆


 藍鉄が最初に文献に登場するのは見角の残した日記だ。彼は彼女に批判的であったからその残した記述についてもそれを前提に考えなければならない。つまりは額面通りに受け取るなということだ。


   ◆


 薙、炎戯、塔都いずれも大魔女の名にふさわしい。藍鉄の師はこうした歴史に残るレベルの魔女ではなくもっと無名の存在だったのではないか?

 その可能性は十分に考えられる。精査されていない文献はいくらでも残っていて、その中からいつか藍鉄に関する記述が見つかるかもしれない。

 けれども魔女はいつも面倒な書き方をする。専門の研究者でも厳密に読み込むのは骨が折れる。


   ◆


 思いついたら書こう。思いつかなかったら――好きなだけ放置することにしよう。


   ◆


 甲陸国は打庭国南方に位置する。古来より2つの国は早々川によって分かれてきた。

 いずれも小国であり大帝国虎口と比べればとるにたりない。打庭国はその天然の要害のため独立を保ってきたが甲陸国はそれすら持っていなかった。

 それがどうやって大国に支配されずにやってきたのか?

 甲陸国は常にすぐれた魔女を擁してきた。そもそも甲陸国成立にはひとりの魔女が大きく関わっている(その魔女の名は不明である)。

 伝統的に魔女に対して大きな敬意を払ってきた。その見返りに魔女は優秀な弟子を育てすばらしい技術を脈々と受け継いでいった。

 そうした系統のひとつの到達点が白縫だった。彼女の実力は同時代のそれと比べて頭ひとつかふたつ抜けていた。


   ◆


 現在10/14、1万字まで書いた。何か思いついたら書こうと思っていたら2週間以上放置していた。

 なんかもう11月に間に合わせなくてもいいんじゃないか、そのうち気の向いた時に埋めていって、それで出来上がったらその時でいいんじゃないかという気がしてくる。

 書いたものを表に出すにはある種の思い込みが必要になってくる。それが他者に読まれる価値があるという思い込み。そうした幻想を抱けなくなってしまっている。

 私には常にその傾向があるけれどとりわけそれが強くなっている。それはそれで構わないとは思う。が、今それを認めてしまった場合、間違いなく11月には出来上がらないことになってしまう。

 まあそれで困ってしまう人間は一人もいないのだけれど。だったらそう思い悩むこともないじゃないか――まったくその通り!


   ◆


 打庭国魔女・薙の死亡はまったく突然の出来事だった。病死とも事故とも、あるいは暗殺だったとも言われているが、その真実は明らかでない。

 重要なのはその原因よりも結果で打庭国が唐突に魔女未所有状態に投げ込まれたことだ。

 魔女のいない国はまったく丸腰の人間によく例えられる。より面倒なことに打庭国のある場所は地理的に戦乱に巻き込まれやすかった。

 つまりは彼らは不意に何も持たないまま戦場へと投げ出された。滅びてしまうにはうってつけのタイミングだった。まあその時は滅びなかったわけだが。


   ◆


 ちなみに勝者である藍鉄の方はその戦闘について記録を残していない。大分後になって弟子翔覧に問われて「めっちゃ強かったよね、まあ私が勝ったんだけど。あれ、でも、なんで勝ったんだろうね、よく覚えてないや」と答えているぐらいだ。

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