クイズ! 具材当てまSHOW!

@pty029

最後のクエスチョン「ドジョウのおでん」

 テレビ番組「クイズ! 具材当てまSHOW!」は終盤に差し掛かっていた。


 司会者のオッサンの後ろには巨大な液晶モニターがあって、ドジョウ入りおでんの写真が表示されている。


「最後の問題は、皆さんがお召し上がりになったドジョウのおでんの具材です」


 パネラーはひな壇の上下に三名、計六人。全員が折り畳みテーブル付きミーティングチェアに座っている。


 全席のテーブルにはお盆に乗った取り鉢と箸が見える。取り鉢は空で、おでんの汁が少し残っていた。


「これから流れる動画を参考に具材を当ててください。ただし、あくまで参考です。特殊な具材はありません。材料は五つあります。一問正解で十点ですから、最下位で十点の小路さん、トップで三十点の杉浦さんに勝つチャンスがあります。がんばってください。一問目です」


 デカい液晶モニターに動画が映る。




 ◇◇◇


 半魚人がうんこ座りでにじり前進し、一本グソのようにカエルっぽいひも状の卵を一本産んで、画面の外に消えた。


 透明な一本卵ゼリーにはつぶつぶ卵がある。いくつもの卵がぷるぷる震えて割れ、中からドジョウのような半魚人の幼体が外に出た。


 ◇◇◇




 パネラーの一人が椅子から倒れこみ【ピー!】を吐く。再起不能。テレビ画面的には虹色処理が施された。

 常連のパンチパーマ杉浦誠が挙手する。コストダウン世知辛くボタンなどは無い。


「ハイ! 半魚人!」

「杉浦さん残念! 違います」


 初参加のショートボブ女優、小路沙耶が恐る恐る手を挙げた。


「はい……ドジョウですか」

「正解です! それでは二問目の動画です。皆様、耳をふさいで」




 ◇◇◇


 畑にて、耳栓を付けた男がダイコンっぽい葉っぱを掴み、地面から引っこ抜く。

 人型のダイコンっぽい根っこは悲鳴を発した。


 ◇◇◇




 根っこの声は「聞こえる」ではなく「聴覚中枢系に黒板の引っかき音を叩き込む」ようなもので、耳を塞いでいなかった三人のパネラーは意識を喪失して倒れた。


 両手で耳を塞いでいた司会者、杉浦、小路、耳栓装備済みスタッフは健在である。


「ハイ! マンドラゴラ!」

「残念!」


「……だいこん?」

「正解! 三問目の動画です!」




 ◇◇◇


 実験ラボな部屋にて、化学防護服を着た男が、ラット入りガラス箱に挽き肉団子を投げ入れる。ラットは肉団子をカジったのち泡を吹いて倒れた。


 画面が右へ動き奥のステンレス机をズームする。カラフルな小鳥の死体が映った。


 ◇◇◇




「ズグロモリモズ」

「違います」


「鶏つくね」

「正解! 四問目の動画!」




 ◇◇◇


 外はずっと吹雪で、避難小屋の中にはガリガリにやせ細った男性二人がいた。

 一人は栄養失調で先ほど死んだ。仲間を看取ったもう一人は壁掛けの斧を取る。 


「許してくれ……許してくれ」


 暗転。


 外はまだ吹雪だ。避難小屋の中ではやせ細った男が一人で焚火にあたっている。男の傍には肉塊やソーセージが転がっていた。


 ◇◇◇




「人肉」

「はずれ」


「牛ソーセージ」

「正解! 最後の動画です!」




 ◇◇◇


 山羊の頭蓋骨が祭壇に置かれている。

 黒ミサのコスをした男が、謎の呪文を唱えながら、祭壇の周りをぐるぐる歩く。


 ◇◇◇




「残っているのは……牛すじ肉ですね!」

「正解! 小路さんが五十点獲得で優勝です!」


「ふざけンなよオラアァァァ!」


 怒りからか、杉浦は顔を紅潮させ、椅子を蹴っ飛ばして退場した。


  


 

 後日に放送倫理・番組向上機構から「演出や表現方法に関する」警告があって番組は打ち切りとなった。

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