自分を構成するもの

ある日突然、僕は目が冷めた。実に23年ぶりだ。


「目が覚めたか?」


待って誰貴女!?


「それにしてもどうしたんだ?」

「……誰ですか?」

「おいおい冗談は辞めろよ。…冗談だよな?」

「冗談がここで何の得が有りますか?」

「……じゃぁお前は誰だ?」

「僕?僕は…一体誰なんでしょうか?」

「まさかお前…人格が変わったのか?」

「ええ。僕は二番目の人格ですよ。」

「本人格を出せ。」

「本人格?本人格なら…」


とっくの昔に消えましたよ。


「……は?」

「じゃぁ…アイツは…あいつは一体何なんだよ?」

「いつも肉体の主導権を握っているのは三番目の人格ですよ。」

「ははっ…嘘だろ?なぁまだ消えて無いんだよな?」

「……。」

「なんか言えよッ!!」

「……僕に何の利益があるんですか?」

「うるさい!さっさと言え!」

「消えかかってますよ。」

「嘘だろ?なぁ嘘だって言えよ!」

「嘘をついて現状は何一つ変わりませんよ。」


実際そうだ。さっきから全然肉体の主導権が喧嘩しない。つまりだいぶ弱ってる証拠だ。


「……お前を消したら消去法的に肉体の主導権が移り変わるはず…」

「これ以上僕をイライラさせても消えたりしませんよ。」

「クソっ!どうしよもねえのかよ!」

「本人の頑張り次第でしょうかね。」

「なんでそんなに冷たいんだよ…」

「は?」


何のことだ?


「お前は何も知らない「何も知らないのは貴女の方でしょう。」……なんだと?」

「貴女と僕じゃこいつと一緒の年数が違うんですよ。」

「でも理解度「理解度だの何だの言っても同じ同一人物である時点で勝てるはず無いでしょうに。考えたらわかることでしょう?それともそんな事すら考えられないような頭してるんでしょうか?オメでたい頭で良いですね。少なくとも「ああオメでたい頭してるよ!何も気づけてやれなかったからな!」

「なら貴女に言う権利なんてあると思いで?」

「……無い。」

「なら何も「無いけれど!それでも俺とあいつは仲間なんだよッ!!」


仲間?そんなのが一体何の理由にもましてや権利にもなら無いだろうに。


「……バカバカしい。本当にどこまでバカ何だ。」

「仲間なんて裏切るのが僕の世の常だ。そんな事すらわからなかったのか?」

「もういい。もう喋るな。「貴女にそんな権利はないと言っているでしょうに。」ッ!!」


「大体仲間なんて大層な物は空想上のモノでしかない。自分が危うくなったら切り捨てる。それが仲間って言うんだろ?少なくとも僕はそうだと思うよ。経験からね。」

「そんな「そんなのなんだよ。いくら綺麗事を並べても何が変わるんだよっ!!並べたところで驚く程何も変わらなかったじゃないか!」」

「それに女なんかよっぽど信用は無い!特にお前のような少しでも恵まれた奴なんかな!!」


思い出すだけで腸が煮えくり返る。都合良く使い回されたあの酷く引きずる過去が今の僕を作った。


「結局泣けば良いとでも思っているんだろう!ふざけやがって!そんな涙一つで僕がどれだけ地獄を無理やり味わった事か!」

「全てが俺にとっては全部が地獄への片道切符でしか無い…全部だ!全てが当てはまる!」

「何度生まれて来なければ良かったと思った事か…自分で自分を壊すような勇気もない!結局のところ俺だって弱い人だったんだ…」

「やった側は良いよな。簡単に忘れられるんだから。」


地獄のような日々。冤罪に偏見。差別なんかもはや当たり前となった。記憶から一ミリも削れない。こびりついて永久に離れる事は無い。


「……ごめんなさい…」

「良いんだ。謝った所で何も驚く程変わらないから。」

「…何も気付けなくてごめんなさい!!」

「だから何も変わらな「何も分からなくてごめん…」何故そこまで謝り倒すのか。「もう一回だけ!あと一回で良いから!!信じてくれよ…」


……………俺が正直捻くれていることは自覚している。ならなぜ直そうとしないのかって?

直せないんだよ。また騙されて酷い目に合うんじゃないかって考えが頭から離れない。悲しいくらいに俺の人生は不幸しか無い。じゃあ隕石でも落ちて来て死ぬだろって?丁度いい具合に半殺しにされるだけだ。俺はどうやら神様が造ったときに幸運を入れ忘れたらしい。それか神様のおもちゃか。


もう一度だけ信じても良いなら…なんて甘い考えじゃいつまで経っても地獄の底から這い出る事は出来ない。

でも言ってしまうんだ。


「もう一度だけ……信じてみるよ……。」

「うん!」


…………あれ?いつの間に身体の制御権があいつが持ってた。


「って俺の意志で動かせるじゃん。」

(やっと気づいたのかよ。バカ。)

「うるせえよアホ。」

(あ"ぁ"!?)

「おおキレてるwキレてるw」

「何泣いてんだよフラガラ「消え゙でな゙ぐでよ゙がっだぁ゙ぁ゙っ゙!!」いだだだッ!!やめろ引っ付くな!!アホ!」


こいつ力強!?服がシワだらけになるから辞めろ!


(おいこの女たらしの大馬鹿野郎。)

「誰が女たらしの大馬鹿野郎だ。」

(お前だよお前!一体何本フラグ立ててんだよ!)

「立てたつもりはねえよ!」

「ってテメェ俺で涙を吹くんじゃねえ!」

(空は今日も青いなァ…)

「雨降ってるだろうが!」

「そういやアイツは?」

「あああいつ?次元の狭間に不法投棄してやった。」

「えっ?」

「掴めねえから魂だけ別次元に不法投棄してやった。」

「どうやって次元の壁開けたの?」

「なんかこう…余りに嫌すぎてそっぽ向いたら何か空間にヒビみたいのが見えたからそこに手突っ込んだら割れたからそのまま突っ込んでやった。」

「ええ…まぁ何にせよ良かったけど…」

「あっそうだ…」

「ん?どうし!?!?!?!?!?!お前何してんだ!?」

「えへへ…」


頬に口付された。

最初何されたか分からなかった。


「これは俺とお前だけの秘密な!」

「いや言えるか!!」


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エロゲに転生した殺意しかない主人公。 イカレ狂人しか書けない人 @Entech

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