第1話 英雄の凱旋


王都ラザレオ城では、魔王討伐達成の式典が開かれていた。


そこには、各国の王や上流階級の重要人物など、様々な人が謁見の間に来ていた。


中でも、一際高貴な服を身に付け白く長い髭を生やした小太りの男、アンドレア・タナスタシア王は、太々しい態度で謁見の間の椅子に座る。


アンドレア王の前には、魔王討伐に出兵した兵士達が、綺麗に隊列し膝を突いて頭を下げている。


そして今回魔王討伐を先導したエタニティ部隊は、隊列を組む兵士達よりも一歩先で膝をついていた。


アンドレア王の隣には、高貴な服を身に纏う細々とした男がいた。彼の名はガルーマ・ポジェット、王の側近をしている。ガルーマは、巻物を読み上げる。


「この度、魔王討伐に多くの功績を残し、我ら人間の勝利に多大なる貢献を果たしたエタニティ部隊には、ラザレオ第87国王、アンドレア・タナスタシア王から直々に栄誉を讃える」


ガルーマが一礼すると、アンドレア王は椅子の肘掛けに目一杯、力を入れて立ち上がりエタニティ部隊の隊員の名を一人ずつ呼ぶ。


エタニティ部隊員は、それに呼応する。


「エタニティ部隊隊長、ウォレン・ライアン」

「はい」


「エタニティ部隊副隊長、マリア・アンデルメン」

「はーい」


「エタニティ部隊神護兵、デルバ・ウォーマー」

「オス!」


「エタニティ部隊後衛兵、ルーラ・オルタリア、並びにマーラ・オルタリア」

『はい!』


「そして、よくぞ無事に帰ってきた。エタニティ部隊前衛兵、ミーリア・タナスタシア」

「…はい」


アンドレア王は、金や銀、プラチナなどが装飾された首飾りをガルーマから受け取り、それをエタニティ部隊員の首元に掛けていく。



最後の一人、ミーリアに首飾りを掛け終えた後、謁見の間からは拍手喝采起こる。

参列している者の顔は、長きに渡る悪夢から解放されたような笑顔と、エタニティに向く声援が響いた。



暫く続いた拍手喝采は次第に止み、静寂が戻ってくると、ガルーマが場を閉めようと話をはじめる。

「以上6名は、長きに渡る人と魔族の戦いの歴史に終止符を打ち、この功績は——」


「ちょっとお待ちください!」

堪らず声を上げたのはミーリアだ。

「何故こここに、グレン先輩がいないのですか!?」

「おい、ミーリア。王の前だぞ」

ウォレンが小声でミーリアを止める。

「関係ありません!お父様!魔王討伐をしたのは紛れもない、グレン先輩です!」

参列者からはザワザワと話声が上がる。


ガルーマがメガネを正しながら、慌てて止めに入る。

「ミーリア王女!例え相手が父上でも——」

「よい」

アンドレア王の言葉は、魔王と違った重みがありその場が緊張と静寂に包まれる。


「ミーリア。彼は自分からこの式典を欠席すると言ったんだ。私達は何もしておらん」

「直接グレン先輩と、お話したのですか?」

アンドレア王は髭を触りながら口を閉ざす。

「お父様、そろそろグレン先輩を認めては——」

「ミーリア・タナスタシア!隊長命令だ。落ち着け」

ウォレンは隊長権限を使い、ミーリアを止める。


ミーリアは悔しそうに、再び王の前に膝を着く。

「取り乱してしまいました。申し訳ありません」


「ふむ。これが親子喧嘩というやつかのぉ」

アンドレア王は髭を触りながら、冗談を言う。

謁見の間の参列者側から笑い声がちらほらと聞こえた。


「それでは、これで式典を終わります。城外には"英雄エタニティ"を一目見るため各国から乗客達がお越ししています。彼らに手を振ってあげてください」


ガルーマはラザレオ城の大きな扉を開く。

「英雄の凱旋です!!!」


開かれた扉からは眩い光が差し込み、各国からエタニティを見るために集まった人達が黄色い声援を上げる。


グレンを除いた6名のエタニティ部隊は、王都ラザレオの花道を歩いた。

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