ささやかな余白

Rotten flower

第1話

紙をめくる音が教員室に響きわたる。

陽も落ちて真っ暗になった外。私の机の上には五~六ページ分の原稿用紙が置いてあった。

もう一人は教室で行っている。別にどこでやろうと自由だが。

「私の心の中は溝のように汚れていた。」

このように生徒が書いた文章をそのままコンピュータに落とし込むのが私の仕事だ。今時、スキャナを使ってしまえばそれまでだとは思うが。

私は読み終わると原稿用紙のささやかな余白にこう書かれてあることに気がついた。

「白に染まった世界では黒なんて色は存在しない。」

それはそうだと賛同すると、そのまま私はキーボードを操作した。




昼休み。別に教員にとっては何ともない時間だ。

私は階段を下りる。大きな声が聞こえた。

「でさ、それであいつのことなんだけどね。」

「私、あいつのこと気に入らない。」

そう女子生徒が言った。大きな声で陰口を言うことはあまり道徳がなっていないのではないか。

「あいつって誰。」

「名前なんて言わせないでよ。宮入金美。」


宮入金美。あの原稿用紙の子。意味の分からないあの文章。結局、真相は闇の中だ。


「あいつ、本当に根暗って感じ。」

「…そんな奴居たっけ。」

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