僕にとっての君
醬油かけたまご
第1話 記憶喪失
「...さん、わかりますか?」
目が覚めると、僕は見知らぬ天井を見上げていた。
「...ここは?」
「病院です。事故で車に跳ねられて一週間ほど意識がなかったんですよ。」
看護師さんはそう言うと先生を呼びに行くと言って走っていった。
「意識が戻ったようで安心しました。ご自分の名前などわかりますか?」
先生に言われて気づいた。
自分の名前も、年齢も、何もわからない。
先生はカルテなどから僕のわかる限りの情報を教えてくれた。
名前は神田春翔、17歳 高校生だ。
交通事故で病院に搬送され今に至るそうだ。
「先ほど親族の方に連絡をしたのですが、こちらにすぐに向かう
とのことでしたので記憶がないこともお伝えしておきました。」
先生はそう言うと病室を後にした。
ほどなくして、女性の人が病室に入ってきた。
「大丈夫!?」
40代後半くらいだろうか、それにしてはかなり綺麗な女性だった。
「そっか。記憶がないんだもんね...」
この女性は咲子さんというらしい。僕の遠い親戚の人のようだった。
「僕の母や父は?」
シンプルな疑問だった。母や父が来るのではなく、
なぜ親戚の人が来るのか。
亡くなっていた。
母と父と僕は同じ車で出かけていたところを事故にあって
母と父は事故にあった時点で助からないほど遺体が損傷していたらしい。
「そうだったんですね...。」
記憶がない。ということは母と父との思い出も当然ない。
どういう顔をすればいいのかわからなかった。
咲子さんは亡くなってしまった母と父の代わりに僕のことを引き取ってくれたらしい。
咲子さんは、また明日様子を見に来るからと言ってその日は帰っていった。
明日から検査や治療、リハビリなどが始まると聞いていたので
その日は僕もすぐに眠った。
--------------------------------------
次の日、検査やリハビリなどを終えて病室で休んでいると、
「春翔君?」
と扉のほうから名前を呼ばれた。
咲子さんがお見舞いに来てくれたんだろうか。
病室に入ってきた女性を見ると、咲子さんではなく
制服を着た女の子だった。
「良かった!意識戻ったって聞いてお見舞いに来たの!!」
生憎、僕には記憶がない。
「ごめん。記憶がなくて...君は僕を知ってる人ですか?」
彼女は最初驚いた表情をした後、すこし悲しそうな表情をしていた。
「私は...」
僕の友達だろうか。それにしてもすごくかわいい子だな。
こんなかわいい女の子の友達がいたなんて。
記憶を忘れてしまったことを少し後悔した。
「私は...高野 花。あなたの...彼女だった人です。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます