第11話 興味

気まずい朝食をとり終わったあと、庭にいく。

『アデライン』

 バメオロスが期待に満ちた表情で、私を見ている。

 侍女たちを下がらせ、バメオロスと二人きりになってから、花壇の土に手を当てる。すると、イーディナ花が咲き誇った。


 バメオロスがしっぽをぶんぶんとゆらしながら、イーディナ花に顔をうずめる。私はそんなバメオロスを微笑ましく見守った。


『美味しいイーディナ花をありがとう』

「どういたしまして」


 さて。今日はこの後なにをしようかしら。昨日もしたおいかけっこもいいけれど。


 そんなことを考えていると。

「バメオロス?」

 なんか、また、大きくなってない?


 バメオロスはまあまだ、子犬のような大きさだけど。


『アデライン』


 駆け寄ってくるバメオロスの黒い瞳は、相変わらず、つぶらだけど。バメオロスを撫でようとした、そのときだった。

『ふせろ!』

「え──」


 慌てて屈んだ。すると、なにかが私の真横を通りすぎた。ボールだ。それも、手紙が巻き付けてある。



 どう考えても、私にむけて……よね?


 バメオロスは中身を開かない方がいいと思ったけれど、私はニート生活を楽しみたいので、脅威なら取り払うべき。


 そう思って、くくりつけられた手紙を読む。


 【クラウス様は、お前のことを愛していない。所詮、お前はお飾りの王妃】


 クラウス……旦那様の名前だ。文字は、丸く、また、手紙からはかすかに香水の香りがする。


 ふーん。旦那様ってモテるんだ。まあ、お顔はいいものね。


 なんだぁ。てっきりもっと刺激的な内容が書かれているのかと思ったけれど。単なる事実じゃない。おもしろくないわね。思わずむっ、と顔をしかめた私に勘違いしたバメオロスがすり寄った。


『アデライン、あなたには私がいる』

「ありがとう」


 ……ん? まてよ。

「バメオロス、私、陛下に興味がわいちゃったかも!」

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