第9話 ぬくもり
うーん、三食昼寝つきのニート生活は楽しいなぁ。
午後はバメオロスとおいかけっこして遊んで疲れたし、もう寝ようかな。
そんなことを考えて寝室でごろごろしていると、来客があった。
こんな時間に訪ねてくる非常識な人は一人に決まっている。そう、旦那様だ。
今日は起きているバメオロスが、心配そうに私に駆け寄る。
私は、バメオロスを安心させるように、頭を撫でた。
「本当に、君は神獣の主、なんだな」
そんな私たちの姿をみて、旦那様は、興味深そうに私を見た。それから──、一点を見つめて、口角を上げた。
「昨日の薔薇は気にいったみたいだな、良かった」
「!」
やっぱり、あの薔薇捨てるべきだったかしら。いえ、でも、花に罪はないもの。
「……陛下、今日はどういったご用件でしょうか?」
「君に謝りたい。私は、初夜に君にとてもひどいことを言った。アイルーマから来たというだけで、君に冷たく当たった」
「……」
こんなこといったら悪いけれど、別にどうでもいいけど。私は平穏無事なニート生活が送れればそれで。
「私はできれば、君と一から関係を作りたいと思っている」
一から、ね。でも、それは──。
「恐れながら。陛下が、対話したいのは、私ではなく、バメオロスなのでは?」
「っ……!」
私がそういうと、旦那様は何とも言い難い顔をした。これは図星ね。
「私は今日は別の部屋で眠ることにします。なので、どうぞお二人でごゆっくりお話しくださいませ」
「……まってくれ!」
旦那様が、私を引き留めた。
「何かご用でしょうか?」
「……っ、これを君に」
旦那様が差し出したのは、昨日と同じ、トゲが抜かれた一輪の紫の薔薇だった。
「ありがとうございます。では、失礼しますね」
花に罪はないので受け取って、私は隣の自室に戻る。
ソファがあるから、一日くらいなら、そこで眠れるはずだ。
そう思って横になると、ミャアと音がする。扉をあけると、バメオロスだった。
「バメオロス?」
『ユーリシア王には帰ってもらった』
そういって、バメオロスは私にすり寄る。
「でも、陛下はあなたとお話があるみたいだったのに……、よかったの?」
『私が優先すべきは、アデライン、あなただけだ』
そういってくれたバメオロスを抱き締める。この国の王妃としては失格だけれど。私は、お飾りの王妃で、ニートだから。自分の欲望に忠実だ。
「ほんとはね、昨日一緒に寝たから、一人で寝るのは寂しいと思っていたの。だから、ありがとう」
二人で身を寄せあって眠る。
こうして眠るのは、二回目のはずなのに。
もう、一人で寝るのは考えられない気がした。
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