第6話 ニート仲間
いったいどういうこと?
実は、バメオロスは偉い存在だったのだろうか。
首をかしげていると、旦那様は震える声でいった。
「なぜ、戦のときに現れてくださらなかったのです……! あなたさえいれば、私たちは……」
バメオロスさえいれば、勝てた? でも、戦況は私の祖国であるアイルーマの圧勝だった。バメオロスの存在で、左右されるようなものではないと思うけれど。
バメオロスのほうをちらりとみると、バメオロスは相変わらずつぶらな瞳をしていた。
『私はいつでもお前たちと共にいた。気づかなかったのは、お前たちだ』
そういって、撫でてほしそうに私の手に頭を擦り付ける。私は優しくバメオロスの頭を撫でた。
『私を見つけ、孤独から掬い上げてくれたのは、アデラインだ』
あれ、私、バメオロスに名前を名乗ったかしら?
一瞬浮かんだ疑問は、旦那様の問いかけによって霧散する。
「神獣をどこで見つけたんだ?」
「窓の外に」
私がバメオロスがいた辺りを指差すと、旦那様はため息をついた。
『お前たちは【目】を喪ってしまった。今この世で【目】をもつのは、アデラインのみ。盟約は、もう、終わったのだ。私は、アデラインと自由に生きる』
ええと。盟約とか目とかよくわからないんだけど。
とりあえず、バメオロスもニートになりたいってことでいいのかな?
私が尋ねるようにバメオロスをみると、バメオロスはミャアと鳴いた。
それなら、私の仲間ね。一緒にニート生活を楽しみましょう。
「っ、わかり、ました」
旦那様は、何か言いたげに私を見つめた後、去っていった。
◇◇◇
その夜。
寝室でくつろいでいると、来客があった。
その来客とは──……。
「陛下? なぜ、この部屋に?」
そう、旦那様だった。
旦那様の表情からは、心が読み取れない。
「なぜ? 私は、あなたの夫だ。妻を訪ねるのに理由が必要か?」
普通の夫婦なら、ね。
でも、私たちの関係は初夜で決まったはずだ。私があなたを愛することも、あなたが私を愛することもないと。
まさか──。
ベッドの横で眠っているバメオロスを見る。バメオロスを懐柔するために、パートナーである私をどうにかしようって魂胆かしら。
それなら、おあいにく様。バメオロスは大事なニート仲間なのよ。奪わせないわ。
私は、じっと、旦那様を見つめる。
旦那様の手が、私の耳に触れた。
「……おやすみ」
そういって、旦那様は去っていった。
? ? ?
何がしたかったのかしら。
なんだかよくわからないけれど、どっと、疲れた。
髪をかきあげようとして、気づいた。私の髪に、私の瞳と同じ色である、薄紫の薔薇が飾られていた。当然、私が用意したわけではない、それ。
「……これをとどけるために、わざわざ?」
花なんて興味がないわ、と切り捨てるには、あまりにも綺麗な薔薇だった。それに、私は誰かから花を贈られるのは初めてだったから。
「花に罪はないものね」
私は、薔薇を一輪挿しに飾ると、眠った。
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