第12話「白の挽歌とその終焉」
「あなたもあなたで、大変だったんだね」
「お前と比べると霞む気もするけどな」
クレイドルがこの白い壁……ホワイトエレジーの投影を案内しながら話した内容は、想像の斜め上を征くものだった。七千年前というからには、自然と共存したのどかな生活か、はたまた私の時代まで続く、既に高度な発展を遂げた文明の様子を見られるかもと思っていたのだが。
そういえば。
「あなたの名前を呼ぶ声だけ、歪んで聞き取れなかったけど……やっぱり『クレイドル』は本当の名前じゃないんだね」
■■■。明らかにそれが『クレイドル』の意思を名乗る声の本来の名だろう。
「ああ。今の状態を維持するために、俺はちょっとばかし代償を支払っててな。名前もその内に入ってる」
「ふ~ん。それじゃ私たちは、どっちもしっかりした名前がないんだね」
「……? そうなるな」
ふ~ん。ふふっ。
「――――それで、どうしてホワイトエレジーの暮らしから……あなたは今みたいになっちゃったの?」
「やっぱ切り替えはっや。そして笑顔は何なんですかね?」
◇◆◇
ストラクチャー。
当てのない希望と過去の栄光に縋り、緩やかに腐敗していくだけの籠城策。徐々に減っていく人口と食料の配給。拡大する貧民街と規律違反の商売。死にかけの老人を早めに収容した墓場のような惨状に、いつの間にやら終焉は訪れていた。
世界各地のストラクチャーから連絡が途絶え始めるという形で。
最初こそ急ごしらえの通信設備が故障しただとか、ついに暴動でも始まったかなんて噂が流れてはいた。そりゃそうだ。デザイアなんていう未知のエネルギーが徐々に星全体を蝕み始めているなんて、誰も知る術はなかったのだから。
大規模、小規模関わらず元々そこまで数の多くないストラクチャーは、瞬く間に数を減らしていった。ホワイトエレジーは、恐らく最後まで残っていたストラクチャー。だから、他のストラクチャーに比べて情報を得る猶予があった。
とはいえ、無人機を飛ばす程度の調査が限界で。
それで得られた情報もまた、目立った外傷も、争いの後も何もなく人が倒れ伏している光景のみで。
原因不明の現象に殺される。そんな恐怖を増長させるだけの行為となってしまったのだが。
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