第46話 募集
ダークエルフ討伐以降、その功績を認められ一躍有名となったギルドであるアナライズアーツには幾つものの新規に探索者契約を結びたいという者たちがベテランから新参者まで多く応募して来た。
それを予想していた訳じゃ無いが、俺は動画で告知を打った。
アナライズアーツで雇う新規探索者の募集告知だ。
雇う人数には制限は着けないが、俺の予想だと俺の
応募して来た人数は四桁に登った。
俺のスキルと、そして俺だけが知るレベルアップの秘密を考え、鑑定する必要があった。
だから、一次選考なんて物は存在しない。
良いと思えばその場で決める。
そんな方式で面接を繰り返し、一日数十人づつ見てようやく雇うべき人材の発掘が終わった。
「本当にこの三名でよろしいのですか?」
「はい。彼らが俺のギルドには必要です」
清水さんが確認を取って来るのも無理のない話だろう。
俺が選んだ三人は全て戦闘職とは言い難い。
「鍛冶師、錬金術師、召像画家ですか……。まぁ、社長の目より確かな物は在りませんね」
「そうだね。それは、清水さんが証明してる」
「え?」
「だって、清水さんが居たからこのギルドは回ってるじゃないですか。ほら、俺の目は確かだ」
「それは……いえ、私ももう少し頑張りますよ」
清水さんは照れたように顔を背けた。
俺は、俺の目を信用している。信じられるのはそれだけと言って過言じゃない。
だから、これまでそれに何度も助けられてきたから、俺はこの眼だけを信じる事にした。
それが、俺の贖罪への一番の近道だと思うから。
「三人はもう来てる?」
「はい、全員揃ってます」
俺は彼らが待つ扉を開ける。
男性が二人、女性が一人。
男性二人のクラスは鍛冶師と錬金術師、女性が召像画家だ。
鍛冶師の男は、少し年上の男性で剣を腰に携えている。
錬金術師の青年は鍛冶師の男より更に年上だ。多分三十代前半くらい。スーツに身を包んでいる。
召像画家の女性は、軽装だが探索者用のしっかりした装備をしている。武器は刃物ではなく本とペンなのだろう。分厚い書物と万年筆の様な筆を持っている。彼女は清水さんと同い年くらいか。
このクラスはかなり特殊で人物を召喚できる。その召喚される人物はクラススキルを幾つか使用できるのだ。彼女がこの中で一番戦闘能力は高いだろう。
「こんにちは、俺がこのギルドのマスター天空秀だ。よろしく」
「よろしくお願い致します。『錬金術師』の
「よろしく頼みますね。『召像画家』の
スーツの男と軽装探索者の女性は、そう挨拶する。
彼らの大体の性格と経歴は既に資料で知っているし、面接もしたので聞くのは二度目だ。
それでも説明してくれるのは俺が何千人も鑑定して覚えてないと思ってるからかもな。
「あ、ちわす。探索者で、クラスは『鍛冶師』。名前は
最後に挨拶した男は、自信なさげにそう答える。
自信が無い理由は知っている。
彼は他の二人とは違う。元々居たギルドを辞めて来た他の2人に対して、彼だけが元々居たギルドをクビにされてここに居る。
「よろしく。それで三人の業務についてだけど、峰岸紅蓮が取り仕切り役でまぁ部長ってとこかな。業務内容は峰岸紅蓮が武器の製造。鳳白隈がポーションの作成。荒川美香は俺が居ない時に俺の分身を作り出して鑑定を使ってくれ」
「はい?」
「……何を言ってるんですか?」
鳳白隈と荒川美香が驚いたようにそう答える。
「何?」
「ダンジョンへ行かせて下さいよ」
「そうよ。ここへ来たのは動画に出て人気になれると思ったから、なのに何その雑用みたいな業務は」
「荒川さん、歳は貴方の方が上かもしれませんが社長には敬語を使って下さい」
清水さんがそう注意するが、荒川美香は聞く耳持たずと言った様子だ。
「はぁ? なんであんたにそんな事言われなきゃいけない訳? 社長さんと私の問題じゃん」
「当たり前のルールですよ」
「大丈夫清水さん、いいよ」
「ですが……」
「ほら、社長もそう言ってるじゃん」
取り合えず、雇った理由を教えないと話にならないか。
「あの、なんで俺なんすか? 2人の方が実績もあるし、俺が纏め役なんて」
峰岸紅蓮もそう問いかけて来る。
「そうだね、理由を説明しよう。君たちにこの業務を行ってもらうのはそれが一番レベルアップするから。そして、峰岸紅蓮がこの中で最も強い力を持っているからだ」
「僕がこのCランクギルドより下?」
「Aランクギルドの二番隊隊長まで務めた私が?」
「え、えっ!?」
「まぁ、信じられないのも無理はないか。じゃあ取り合えず一ヵ月くらい言う事聞いてみてくれないかな、それでだめなら元のギルドに戻れるように俺からもお願いしてみるから。――けど、一つだけ言っておかないといけない事がある」
俺はSランクダンジョンを攻略しなければならない。
スタンピードを起こさせるわけには行かない。
そのために、本格的な攻略が始まるまでの年月でできる限り戦力を育てなければいけない。
その中で彼らが最適だったとそれだけの話だ。
「俺は『鑑定士』だ。そして――俺の目は嘘を言わない」
俺の言葉にその場にいた全ての人間が息を呑む。
その理由が俺には分からなかった。
――
清水咲楽は……私は、その目に闇を見た。
まるで悪神を信じる狂信者の如く、社長は自分の目をそう評した。
その目が恐ろしいなどと思ったのは、きっと私の勘違いの筈だ。
貴方は、何かに取り憑かれているなんて、そんな訳ないですよね?
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