迷宮都市
第44話 変化する世界
このスタンピードについて、確定している事と予想されている事について現在世界各国は会議を重ね、そしてそれは民間人に関しても同様で、出所不明の有らぬ噂話を含めて朝のニュースに取り上げられるほど、今回のスタンピードの事件は大きく取り扱われた。
被災地は太平洋沿岸の西日本に全体的に。
その周辺諸国も大規模なダメージを受ける形になった。
アナライズアーツを含めた複数のギルドはダークエルフ討伐及び、スタンピードでの活躍を理由に表彰されたが、影ではダークエルフの討伐とスタンピードの発生を紐づけて考える人間も少なくない。
タイミングが良すぎた。
ただ、言い方は悪いが津波による利点もあった。
津波の発生と同時に、スタンピードで外に出て来ていたモンスターが全てダンジョン内へ引き返していったのだ。
あの津波を起こした人型モンスターがそう命令したのだろうか。
アジア太平洋加盟国は協議の結果、そのダンジョンを攻略する作戦を打ち立てた。
調査の結果、あのダンジョンは通常のそれよりも内部も非常に巨大な造りになって居り、更にランクに関しても史上最高の『Sランク』に決定された。
そこには俺の鑑定で得られた情報や、あの人型モンスターの情報も加味されている。
迷宮攻略の作戦名は『
ダンジョンを攻略する上で最も必要不可欠なのは、そのダンジョンに出来る限り近い位置にある拠点の建築である。
ただ、この規模のダンジョンを攻略するのならそれだけ探索者の必要人数は増え、拠点の必要物資や規模も増える。
故に『
ダンジョン周辺に海上都市を建築し、そこに世界中のギルドを招こうという話らしい。
超大型ダンジョンであるあの渦巻は、正式名称を『ワダツミ』と命名された。
ただ、都市の建設など幾ら超常のスキルや道具があっても容易に行える事ではない。
完成予定は2年後から3年後だ。
何故、このダンジョンの攻略をこれ程急ぐのかという話だが、あの規模のダンジョンがスタンピードを起こした場合、例えばあの人型モンスターが外に出て来て暴れ回った場合、人類が滅亡する可能性すら存在すると、国際連合によってそう判断されたからだ。
ダンジョンは基本的にランクが高くなるにつれて、スタンピードの間隔も大きくなっていく。
Sランクともなれば、最低でも10年はスタンピードを起こす事が無いと言うのが基本的な学者の見解である。
しかし、あのダンジョンは異例の、発生と同時にスタンピードという事態を引き起こしている。
あのダンジョンだけ独自のルールによってスタンピードを起こしている可能性がある以上、迷宮都市の建造は急務となった。
ダンジョンの近くに拠点があればスタンピードが起こっても早期対応が可能になるのだから。
俺たちアナライズアーツもダークエルフの討伐の功績から、その迷宮都市への支店設営が許可されている。
本来は土地を金で買わないといけないらしいが、アナライズアーツや幾つかのギルドはそれを免除される形で迷宮都市へギルドを建てる事ができる権利を得ている。
ただ、それは二年後、三年後の話だ。
それ以前に俺には幾つもやる事がある。
戦力の増強だ。
ダークエルフ相手に俺は何も出来なかった。
結局仲間頼りだった。
そして次に挑むのは、俺の鑑定がそれ以上のダンジョンだと見せた物。
なら、やはり戦力はもっと沢山必要だ。
幸いな事に俺には鑑定がある。
レベル上げは勿論だが、それと並行して仲間探しをしようと思う。
今更、剣士や魔法使いに興味はない。もううちには、炎剣士と治癒士がいるしな。
それ以上は他のギルドに任せていい。
俺には、俺だけが見抜ける才能がある。
なら、これを使って今までとは違う、探索者全体の『強さ』を開拓するのが俺の仕事だと思う。
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