第34話 ダークエルフvs人類1


 リオン・エヴァ。

 黒峰静香。

 セブン・レッド。

 そして、俺。


 その四人がメイン部隊である。

 黒峰さんは俺がダークエルフの攻略作戦を立てていると知ると、自分の方から参加したいと申し出てくれた。

 やはり三人もの探索者仲間を失っている彼女の怒りは俺では計り知れないほど大きいのだろう。


 たった四人でA級ダンジョンを攻略する、という訳じゃない。

 物資補給部隊は各ギルドから高位探索者を集め、総勢100名程の補給部隊を用意している。


 作戦は俺が中心となって考えた。もし上手く決まれば相手に成す術無く勝利する事も可能であると自負している。


 ただ、ダークエルフの情報が前見た時のそれで全てだと思っている訳でも無い。

 スキル効果は全て把握しているが、出力に関しては見せた威力を最大と仮定している。

 射程範囲、魔法規模、発射速度。それらを加味して補給部隊と本部隊との位置関係を構築した。だから、もし見せて来た以上の出力で魔法を撃たれると少し困る。


「準備はいいですか? ここからはノンストップで戦闘です」


「えぇ、準備はできてる」


「私はもう武器を落としたりしませんから」


「いつでも来い」


 ダークエルフは魔法を司る存在だった。

 つまり、魔力によって作動するあらゆる機器が全てジャックされる危険性があるという事だ。

 だから、俺の【兵霊】を使う。


 このスキルは最大5体まで俺の言う事を聞く人型人形を召喚するスキルだ。ちなみに性能は俺と同等らしい。

 兵霊を一体だけ補給拠点に置いておくことで、即座に指示を飛ばす事ができる。喋れるわけじゃ無いが、先に指示リストを作っているからそれを指で指し示すだけだ。


 今いる場所はダンジョンの最下層から5階層分上の場所。

 ここから奇襲を仕掛ける。


「来い、ゼニクルス。最大フルパワーで持ってけ」


「畏まりました我が主」


「来なさい、蛇神オロチ」


 俺とリオンさんが召喚を発動する。

 更に兵霊から指示して、召喚系のスキルを持っていて使役可能範囲が広い探索者の召喚獣を集める。


「ゼニクルス、行ってこい」


「はっ!」


 ゼニクルスには既に作戦を伝えている。

 こいつの空間魔法は、階層間を移動できる。最大で五階層分、つまり、ここから一気に最下層のダークエルフの階層まで移動できる。


 召喚獣たち連れて、一瞬でゼニクルスの姿は掻き消えた。


 そしてすぐに、ゼニクルスだけが戻って来る。


 これは第一次作戦。

 まだ、戦いは始まったばかりでゼニクルスは失えない。


「多分突破されます」


 蛇神オロチは相手の魔法攻撃を全て無効化するという、ぶっ壊れ性能な召喚獣だが、それにも弱点はある。

 魔力で強化された物理攻撃なら普通に通るという点だ。


 上手くいけば送り込んだ召喚獣だけでかたが着くかもしれないが、そんなに楽観視できる相手じゃないのはこの場の全員が分かっている。


 そして、召喚獣は魔力的な繋がりが存在する。

 俺の鑑定でもそれが視認できる以上、ダークエルフの魔力感知能力なら十中八九この場所を割り出すだろう。

 そして、本作戦における最大の問題点。


 それは、このダークエルフが迷宮主の部屋から外にでる能力を保有しているという点だ。

 迷宮主は刺激しない限り外には出てこない。それに出てこれても最下層からは動かない。それが常識だ。

 けれど、ダークエルフは多分そんな常識をあざ笑うだろう。


 その確信はあの戦いの中にある。

 あいつには知性がある。何故迷宮主の部屋に引きこもっているのかは知らないが、出ようと思っても出れないなんて考えるのは早計以外の何でもない。


 そして、召喚獣を送り込んで数十分程。


「オロチ、消えました」


 リオンさんの召喚獣の反応が消失。

 兵霊から俺に、他の召喚獣も消えたようだと言う通信が入った。

 兵霊はスキルレベルを上げた事で視覚や聴覚を共有できる。だからあっちの情報は直ぐに俺も理解できる。


「来ます!」


 俺の【鷹眼】が草原エリアの端から、超速で移動する人影を捕えた。

 十中八九奴らだ。


 だが、問題はそこじゃない。


「ダークエルフ【二体】視認」


「何ですって?」


「聞いてねぇぞ」


「撤退しますか?」


「いや、戦おう」


 どうせ、ここまで迫られては逃げ切れない。

 最低でも補給部隊が下がれるだけの時間を作る必要がある。


 だが、時間稼ぎのために戦うつもりは毛頭ない。


「逃げる為じゃない。勝つためにだ!」


 俺の言葉に、三人は決意を固める。


「「「了解」」」


 俺の鑑定士の力。

 そして、今ここにいる三人の全力があればダークエルフ二体くらい、討伐して見せるさ。

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