第11話 隣の真価
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リオン・エヴァ 17歳 女
クラス『神仏召喚士』
レベル『16』
体内魔力量1550
身体強化率620
スキル『神獣召喚lv4』『降霊召喚lv2』
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それが彼女のステータス。
召喚術は、一時的にだがスキル名になっている物を召喚し、生物なら使役する事ができる。
恐らく今のは、神獣召喚と降霊召喚の合わせ技だろう。
神獣をその身、いや武器に宿してそれを振るった。
黄金の魔力は神獣による影響なのだろう。
しかし、神獣召喚によって呼び出せる召喚獣をリオンさんは完全にはコントロールできないという事実に、俺の【鑑定】と【観察】は辿り着いた。
ただ、神獣召喚を十全に使い熟せた場合、この場で最も強力な戦力はレベルが最も低いはずの彼女だ。
しかし、使い熟せない物を戦力に数えるのも間違っている。
まぁ、現在の彼女の戦力はBランクに相当するオーガを一撃で倒せる必殺技を使えるといった所だろう。
それだけでも全然俺の戦力は越えているな。
「腕、ごめんなさい私のせいで……」
怒りの矛先を殺し終えた彼女は、申し訳なさそうに俺に謝った。
「いや、大丈夫。ポーションは腐るほど持ってきてるからね」
レベル3の『収納』に大量に入れて来たポーションのその数は四桁を越える。
その中には骨折程度なら完治させる物もある。
流石に腕を骨折した状態でダンジョン探索は無理だ。
ポーションを一つ飲み干して腕を治した。
「大丈夫かしら天空君?」
黒峰静香も俺の心配をして声を掛けてくれた。
よく見ると、周りに居たモンスターは全て片付いた様だ。
「大丈夫です。すいません、上級ポーションを一つ使いました」
「構わないわ。君に死なれると収納の中身がどうなるか分からないし」
俺の身体より中身ですか。
そこは嘘でも心配して欲しかったな。
「それに、君の力は今後も必要よ」
おぉ……
「なんか、人たらしとか言われません?」
ちょっと嬉しかった。
「言われないわよ。今、君から初めて言われたわ」
俺の目を覗き込みながら、彼女はそう言った。
距離が近い。というか、その言い方だと、まるで「君にしかこういう事言わないから」に聴こえて仕方ないから勘違いさせるのは止めてくれ。
このチームは堅実で、一度戦闘が終わると必ず五分程度の休憩を挟む。
それは、集中力の低下を防ぐ目的と共に、見落としをしない為の方策だろう。
流石プロって感じだ。
「それと二人とも悪いけど、バイトの日数一日増やすわ」
「え、それは泊まりで攻略するって事ですか?」
「えぇ、ここまで順調なのは間違いなく君のお陰よ。予定ではここまでも進めないと思ってたから」
「いや、鮮血の偶像ならこれくらいは……」
俺がそう言うと黒峰静香は、静かに笑った。
「無理よ。というか無理だったの。実は鮮血の偶像、君たちを除いたこのメンバーでこのダンジョンに挑むのは初めてじゃないのよ。それで一回目の時はもっと前に引き返した。致命的なダメージを受けたからね」
そう言われれば確かに、そもそもここをA級ダンジョンと判断するに至った探索作戦があったはずだ。
鮮血の偶像が攻略できなかったとなれば、確かにA級認定されるだろうな。
「だから、ここまで進めてるのはその時は無かった力。つまり、君のお陰って事よ。帰ったら君を私のギルドに誘うから、答えを考えておいてね」
そう言って、黒峰静香は去って行った。
まさか、俺が一線級の探索者ギルドに今スカウトされたのか?
「や、やりましたね秀君! 凄い事ですよ!」
「あ、あぁ。そうだよね」
俺が探索者を始めたのは数か月前だが、今まで最弱の探索者なんて呼ばれた事も少なくない。
身体能力、魔法能力、スキル効果、その全てが並み以下だからだ。
けど、俺は確かに日本最上位に位置する探索者に認められた。
それは俺に取って現実味の無い話だった。
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