第9話 支援職
―――
レッドワイバーン
ランクB
魔力ランクC
身体ランクB
スキル【火炎弾】【飛翔撃】
―――
そのステータスは強力の一言だった。
今まで出現していたどんなモンスターよりも魔力量、身体能力共に高水準。
更に、スキルはレイス以外に初めて見る2つ持ち。
レイスは基本ステータスが低いから、スキルが多めにあるのかと思っていたが、こいつは両方のスキルがモンスターランクと同等で在りながら、攻撃系のスキルを2つも所持している。
流石Bランクと言ったところか。
俺のモンスターランク評価は、そのモンスターを倒すのに同ランクの探索者が3人は必要という物だ。
探索者のランク分け評価は、レベル70以上がBランク、90を越えるとAって感じ。
50以上がCで、30以上がD、10以上がE、それ以下はランク無しのビギナーだ。
さて、このメンバーにBランクの人間がどれほどいるのだろうか。
Aランクの黒峰静香がいるから負ける事は無いだろうが。それでも、もしもこいつが複数体登場したら。
もしくは、こいつよりも強いモンスターが現れたら。
嫌でもそんな想像が頭に浮かんでしまう。
その瞬間、チラッと黒峰静香が俺を見たような気がした。
「スゥ……」
「え、秀君?」
俺は大きく息を吸い込み、そして全ての人が聞こえるような大声で叫ぶ。
鑑定紙でモンスターのスキルを見るには、そいつが生きている状態である事が必要不可欠だ。
故に、Bランクモンスターなんて鑑定情報が分かってる方が珍しい。
「ワイバーンのスキルは『火炎弾』と『飛翔撃』の2つです! 火炎弾は火球を飛ばしてくるスキルで、最大連続数は5回! 飛翔撃は突進の際に魔力を体に纏って硬質化し、威力が上昇するスキルです!」
俺の声に、一瞬戦況が止まる。
しかし、今ここで俺に文句を言えるような余裕がある人は殆ど居ない。
そして、その数秒の静けさは全員の頭に俺の言葉を理解させるには十分な間となる。
「了解!」
最初に声を上げたのは黒峰静香だった。
それに続くように、「わかった」とか「おっけー」とか声が至る場所から聞こえてくる。
俺みたいなただの荷物持ちの言葉を信じてくれている。
批判されると思ってたし、怒られるかもしれないとも思っていた。
けれど、この人たちは俺の言葉を信じてくれる。
なら、俺もできる限りの支援を。
レベルが20まで上がった事で覚えた新たなスキル。
その名は『観察』。
相手の魔力や筋繊維の動きを見て、次の行動を予測する事ができる。
レベル1だから、その未来視の秒数は多くは無い。
けれど、それでもここにいる歴戦の猛者ならば、0コンマ1秒でも有効に使えるはず。
「ブレス来ます!」
口元に集まった魔力を見て、それを予測。
俺の声通りに、ブレスが放たれる。しかし、俺の声に反応していた探索者たちは既に防御姿勢に移っている。
「アイスシールド!」
魔法使い系の属性結界で完封に成功した。
しかし、まだ集まった魔力は消費しきれていない。
集まった魔力量と、一撃で使った魔力量を割って、何発分の魔力が込められているのかを計算する。
「まだです! 後2発!」
魔力が嘴に集まり、一気に放たれる。
「ブラッドネット!」
網目に展開された周りのモンスターの血液が、その炎を切り裂くようにガードする。
2発の火炎弾は、粉々になって消えて行く。
それを見たワイバーンの身体が少し浮く。
あの姿勢は……
「飛翔撃が来ます! ワイバーンの鱗には多少ですが魔力耐性があります。その力を強化して突進してくるあのスキルに、魔法系の防御は相性が悪い!」
簡潔に、そして指示とも言える程命令的に。
考えている暇が長いほど、行動へ移るまでのタイムラグが発生する。
だったら、俺が何をして欲しいかを決定した方が効率的。
自分の力にはまだ自信は持てない。けど、ここに居る人たちの力は信じられるから。
「前衛は囲いの防御陣形! 軌道修正して弾くぞ!」
盾、及び剣などの近接系をメインに据えての防御陣形。
それを指示したのは前衛クラスのサブリーダーの男だった。
盾を三枚ほど正面に置き、それを六人の近接系が道を作る様に左右に配置。
全員が一糸乱れぬ連携を行い、インパクトの瞬間衝撃を上へ逃す。
「はぁ!」
「らぁ!」
「ぐぅ……!」
9人の行う防御陣形の効果は絶大で、飛翔撃をノーダメージで打ち上げた。
そして、剣で打ち上げたが故にその鱗には僅かな傷が幾つか出来ていた。
「【血吸い】」
黒峰静香の代名詞。
小さな傷痕から、敵の血液を全て吸い上げる。
治癒されたり塞がれたりしなければ即死必至の最強魔法だ。
ワイバーンはミイラの如く討伐された。
『経験値を120獲得』
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