鑑定士はレベルアップする 〜鑑定で得た情報を動画配信したら、それを見た人が倒した魔物の経験値が分配された〜
水色の山葵/ズイ
鑑定士のレベルアップ
第1話 鑑定士のレベルアップ
俺は鑑定士だ。
ただし、骨董品とか美術品の値打ちや真偽を鑑定する人のことじゃない。
鑑定士というクラスの話だ。
この世界にダンジョンと呼ばれる物が生まれて半世紀、ダンジョンの恩恵によって得られるクラスの力を誰もが持つようになっていた。
ダンジョンから出土した道具の一つに『
そのアイテムは触れた者の体内に吸収されてクラスの力を発芽させる。クラスの力は様々ではあるが、俺のクラスはその中でも特に前例のないものだった。
それが鑑定士だ。
「――速度はそれほどじゃないな。だったら脚を狙って更に速度を奪ってやる!」
とあるダンジョンの第一階層で、俺は【ウッドゴーレム】と呼ばれるモンスターの脚を攻撃した。
このウッドゴーレムは木製なので、剣で切れば簡単に両断する事ができる。
唯一の危険である、地面に根を張っての殴りつけ攻撃が強力だが、ヒットアンドアウェイで慎重に戦えば問題はない。
『経験値を30獲得しました』
よし。
モンスターを倒すことで、体内の
この本はかなり便利で、持ち主の状態把握をしてくれる。
経験値とはクラスのレベルを上げるための数値であり、モンスターを倒す事で獲得できる。
『レベルが1上昇しました』
このダンジョンでウッドゴーレムを含めた何体かのモンスターを倒したことで、クラスのレベルが上昇したようだ。
「ステータス」
俺は自分の能力を確認するため、
―――
クラス『鑑定士』
レベル『2』
体内魔力量110
身体強化率110
スキル【鑑定lv1】
―――
レベルが2に上がったことで、魔力量と強化率がレベル1の時より10ずつ上がっている。
しかし、これは大して大きな数字ではない。
探索者であれば魔力量も強化率も1000を超えているのが当たり前だし、スキルだってもっと攻撃的というか戦闘向きな物が多いはずだ。
しかし、【鑑定士】というクラスはレベル1時点では『鑑定』というスキル一つしかなく、魔力量や強化率も他のクラスに比べられないほど低い。
そんな俺でもウッドゴーレムなどのモンスターを倒すことができたのは、鑑定の力が魔物に対しても通用したからだ。
そもそも俺の持つ鑑定は全く強くも無いし、価値も無いスキルなのだ。まず、人に使えば相手のステータスを見る事ができる。しかし、全ての人間は
次に俺の鑑定を使えば、道具や敵魔物の情報を見る事ができる。しかし、【鑑定紙】と呼ばれる道具がダンジョンから結構な数出土される。
消耗品ではあるものの、一枚千円という値段で買える。
つまり、俺の力にはこの世界で一回千円の価値しかない。
そう聞くと、たった一回で千円なんて凄いと思えなくも無いが、なんとこの力使う度に魔力を消費する。
今はレベルアップの影響で全回復しているが、最大でも連続だと10回程度しか使えない。魔力は全回復するまで10時間かかる。10時間で合計20回しか使用できないので賃金は2万円だ。
うん、バイトよりは儲かりそう。けれど、当然俺の力はそんな値段では買われない。何故なら鑑定紙は自分だけで見ることができるが、俺の力は俺が見て相手に伝える形になるからだ。
それを嫌がる探索者が多いし、例えば1回500円程度にしたとしても他人に自分の取った素材や魔道具を見られたくない、と望む人間の方が多いから鑑定紙を使う人間が殆どだった。
そして、少なくとも俺にはそんなバイトだけで生活する気がない。探索者は子供のころからの夢だから。そして、入院中の幼馴染の手術費用を稼ぐにはその程度の額では全く足りない。
「なぁ、楓、絶対治してやるからな」
ダンジョンから帰って来た俺は病院へ向かい、目覚めぬ眠りにとらわれている幼馴染を見てそう言った。
俺と彼女の両親は、ダンジョンのスタンピードによって同じ事件で死んでいる。その時、彼女も重傷を負って意識不明になった。だから身寄りもない彼女の入院費は俺が出している。
俺には、もう護るものがこいつしか残っていない。だから、楓だけは絶対に治してみせると、そう誓っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます