嘘をつく鏡と月の欠片を拾った夜

黒本聖南

嘘をつく鏡

 鏡よ鏡よ鏡さん。貴方は嘘しかつかないのね。


『お母様は貴方を疎ましく思っております』

『お母様は貴方を生みたくなんてなかったのです』

『お母様は貴方さえいなければ苦しまなかった』


 聞きたくないわ、何も聞きたくない。

 ──叩きつけた鏡は粉々。

 嘘しか言えないのね、役立たず。

 ──声は二重三重に増えていった。


『お母様は』『お母様は』『お母様は』『お母様は』『お母様は』『お母様は』『お母様は』『お母様は』『お母様は』『お母様は』『お母様は』『お母様は』『お母様は』『お母様は』『お母様は』


 ──手は何の役にも立たない。

 やめなさい。

 ──耳に蓋は存在しない。

 やめて。

 ──あるのは、そう。


『貴方のことなんて愛してない』


 ぜんぶ、うそよ。

 ──■■のみ。

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