第40話 襲撃者の異変
教会から外に出たアレスは周りに視線を向けてみる。
そうすると、西の方角に時計塔らしき建物が小さく見えた。
アレスはついに視界に入る位置まで来られたという喜びと時計塔までまだまだ遠いなと思う気持ちから複雑な表情を浮かべる。
しかし、このまま気落ちしていては今後の行動に支障が出ると思い、気分をポジティブな方向に切り替える。
気持ちを切り替えたアレスは一度視界を上へ向ける。
空はまだ暗いが、ほんのり明るくなってきている。
その光景を見たアレスはもうすぐ日の出だなと思う。
そして、アレスは再び聴覚強化の魔術を使用すると、周りへの警戒を強めながら時計塔を目指す。
この先は一度と行ったことのない未知の領域だ。
これまで以上に警戒して進む必要がある。
先ほどよりも警戒を強めたアレスは慎重に道を進んで行く。
一度も来たことのない場所であるゆえ、手探りで道を開拓していく必要があり、分かれ道などは直感で選ばなければならない。
そして、アレスは一つ目の分かれ道にやって来た。
ここのみちは三つに分かれており、それぞれ右斜め前、直線、左斜め前となっている。
アレスはこの中から好きな道を選び、進まなければならない。
アレスは迷う。
どの道で進むのが安全かつ最短ルートであるかと。
だが、迷っている暇などない。
少しでも長く立ち止まれば、襲撃者に見つかるリスクも高くなる。
アレスは意を決して選択する。
アレスの選択は直進することだった。
真ん中の道を選んだアレスはそのまま進み続ける。
真ん中の道を選んだアレスは警戒しながら進んでいると、索敵範囲内に何かが入ってくる。
アレスはその正体を探るべく気配を消し、意識を集中させる。
だが、アレスが完全に相手の正体を把握する前に屋根の上から何かが飛び出してくる。
そして、飛び出した者はアレスに向けて何かを勢いよく振り下ろそうとした。
アレスは反射的に襲って来た者を回避する。
アレスが回避すると、それは地面を何かで叩き潰し、あまりの威力に砂煙が巻き上がる。
反射的に回避したアレスはそのまま砂煙から距離を取る。
距離を取りながら砂煙の方へ視線を向けていると、目にも留まらぬ速さで何かが砂煙の中から飛び出してくる。
そして、手に持つ何かを勢い良く薙ぎ払う。
アレスは屈むことで薙ぎ払いを回避する。
回避したアレスはそのまま自分に攻撃を仕掛ける者へ視線を向ける。
それと同時に驚愕と絶望で顔が歪む。
アレスのことを攻撃したのはあの襲撃者であった。
どうやら、襲撃者はアレスの位置を完全に把握していたようだ。
そのため、アレスの索敵は意味をなさなかった。
薙ぎ払いを回避したアレスはそのまま後方へ勢い良く下がる。
しかし、アレスごときのスピードでは襲撃者との距離を取るなど不可能であり、一瞬で追いつかれる。
追いついた襲撃者は光が収束する白剣を勢い良く薙ぎ払う。
その瞬間、通路を埋め尽くす光の奔流が生まれ、アレスは光の奔流に飲み込まれた。
そして、光の奔流が通った後には何も残らなかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
アレスは気づいたら教会の中にある生命の樹の前で倒れていた。
目が覚めたアレスはその場にゆっくりと体を起こす。
そして、先ほど自分は襲撃者が放った光の奔流に飲み込まれ、死んだことを思い出す。
俺のが先ほど死んだことを自覚したアレスは大きなため息をつく。
ため息をついたアレスはその場に立ち上がる。
立ち上がったアレスは軽い運動をして体に不調がないか確認する。
一通り動かして体に不調がないことを確認したアレスは立ったまま思考する。
なぜ、襲撃者に見つかってしまったのかを。
アレスは教会にたどり着く前よりもさらに警戒を強め、バレないよう気配を消して歩いていた。
しかし、襲撃者には策定範囲内に入る前に居場所がバレているようであった。
その理由をアレスは考える。
だが、全く心当たりがない。
そして、アレスは一つの可能性に辿り着く。
それは今まで襲撃者は本気を出していなかったというものだ。
確かに、今まで本気を出していなければ、このような事態の説明がつく。
そうなると、襲撃者が今まで本気を出していなかった理由が分からない。
単純に考えれば、襲撃者が今までアレスのことを舐めて慢心していたのだと思うだろう。
確かに、襲撃者は多少アレスのことを侮っていることはあった。
しかし、襲撃者に襲われた際、アレスはとあることに気がついていた。
それは焦りだ。
アレスを仕留める際、襲撃者は何度かアレスに攻撃を仕掛けていたが、前の時と比べて無駄な動きが多かった。
それに、襲撃者の攻撃の速度が上がった代わりに精度が下がっていた。
まるで、冷静さを欠くしているようであった。
そのことから、襲撃者は何かに焦っていることが窺えた。
襲撃者が焦りを覚えていることは分かったが、その理由まではアレスには分からなかった。
あまりにも襲撃者に関する情報が少なすぎるためだ。
あの者は名前も分からなければ、素顔も分からない。
一つ分かることは獣王国ガルニシア側の存在であるという点だけだ。
深く考えてもわからないものは分からないと諦めたアレスは再び時計塔に目指すべく、教会から外へ出たのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます