第33話 謎の襲撃者
再び四つ目の時計塔を目指すことにしたアレスは周りを警戒しながら小走りで移動する。
彼は今だに自分のことを襲撃した者の正体を把握していない。
そのため、どこから来ても良いように警戒を怠ることは出来ないのだ。
アレスは警戒しながら小走りで移動していると、南西の方角に何かがこちらへ向かってくる足音を聞く。
アレスは集中し、その音を確認してみると、それはいつもの犬型ゾンビであることが分かった。
いつもの犬型の獣人ゾンビであることが分かったアレスはこのまま小走りで移動すれば振り撒けると思い、無視して進み続けようとした。
その時、先ほどゾンビがいた方面から爆発音が響き渡ってきた。
何事かと思った次の瞬間、明らかにこちらへ向かってくる足音のようなものが聞こえてきた。
しかもその足音は集中しなければ聞き逃してしまうほどの小ささかつ、ゾンビたちとは比べ物にならないほどの速度である。
こちらへ向かう足音を聞いたアレスは急いでその場から走り出す。
アレスはその足音から逃げようと走ってはいるが、一向に差が広がることはなく、逆に差を埋められていく。
内心慌てるアレスはさらに走る速度を上げ、全速力で走っているが、足音もさらに速度を上げ、近づいてくる。
そして、足音はアレスのことを追い抜き、並走し始める。
自分と並走し始めたことにアレスは焦りを感じながらも冷静さを欠くことはなく、相手の出方を窺っている。
相手もアレスに警戒されていることに気づいているようであり、並走したまま何もしてこない。
そうして、アレスと足音が並走し始めてからどれくらいの時間が経ったのだろうか。
突如として状況は一変する。
自分と並走している足音の方へ警戒を怠っていなかったアレスであるが、ふと前を見ると、視線の先は左右に分かれていた。
先が分かれ道になっていることに気がついたアレスは一瞬、どちらに進もうかと足音から意識を逸らしてしまった。
その瞬間、アレスの左側から強烈な殺気が放たれた。
この殺気を感覚強化でいち早く察知したアレスは無意識のうちに大きく前へ飛んでいた。
次の瞬間、先ほどまでアレスが立っていた場所が左にある家を貫通してきた光の奔流により、削り取られ、跡形もなく消し炭になっていた。
前に飛んだアレスは真後ろが吹き飛ばされた勢いに押されて着地に失敗し、地面を跳ねるように転がってしまった。
地面を跳ねるように転がったアレスは何とか止まると、後ろへ視線を向ける。
アレスが後方へ視線を向けていると、光の奔流により破壊された家の中から襲撃者が姿を現す。
その大きさは4メートルほどとアレスが想像したサイズよりも小さい。
その見た目は全身を鎧で包んでいることから詳しくは分からないが、足は大きく発達しており、足のサイズに合う鎧がないのか、上半身に比べて大きく露出している。
しかし、足が露出しているからと言って弱点であるかと言われると、アレスはNoと答えるだろう。
何故なら、この襲撃者の足は身に纏う鎧がなくても問題ないと思わせるほどの太さと頑丈さを兼ね備えているからだ。
襲撃者の足は過剰なほどの筋肉が詰まっていることが分かり、その筋の硬さも異常であることは容易に想像できる。
そして、今のアレスはあの筋肉を削ぎ落とせるほどの力があると聞かれれば、あるはずもなく、アレスの剣は襲撃者の筋肉を削ぎ落とすことは出来ないだろう。
もしも、アレスの剣が常識はずれの切れ味を持っているならば、対処できるかもしれないのだが、あいにく彼が持っている剣は少し切れ味のいいだけの普通のものだ。
そんななまくらではこの襲撃者に傷をつけられるかすらも怪しい。
足が異常に発達しているのに対して上半身は細いということはなく、上半身も下半身に負けないほど屈強である。
腕は脚に負けず劣らずの屈強さを誇っており、まるで体から大木が生えてきたように太い。
その太い手にはその体のサイズに見合う大きな二本の剣がそれぞれ握られており、片方は白色の刀身の剣であり、もう片方は黒色の刀身である。
その二振りの剣は白色の方がおよそ1,5メートルほどであり、黒色の方は2メートルほどと白剣と比べて一回り大きい。
そして、剣はどちらも直剣と呼ばれるものである。
鎧の方は黒を基調としたものであり、その素材などは見ただけでは判断できない。
鎧には何かの刺繍が施されているのだが、アレスには全く心当たりはなく、刺繍が何を表しているのか分からなかった。
他に特徴という特徴もない。
アレスは襲撃者へ視線を向けていると、相手もその視線に気付いたらしく、襲撃者もアレスの方へ視線を向ける。
次の瞬間、アレスは脊髄反射で左へと飛んでいた。
そして、アレスが左へ飛んだことを認識した瞬間、先ほどまで彼が立っていた場所に大きなクレーターができていた。
いきなり大きなクレーターができたことに驚いたアレスはクレーターの中へ視線を向けてみると、その中心には黒剣を地面に振り下ろした襲撃者の姿があった。
アレスが視線をクレーターの中へ向けたことで襲撃者もアレスの方へ視線を向け、再び目が合う。
そして、アレスはクレーターから離れようと急いで走りだしたのだった。
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