第17話 11月14日「いいリーダーの日」


 早くも逃げ出したい気持ちを堪えて、活き活きとしたイチゴを頬張る。

 濃厚なさつま芋の香り漂う中で、キュートな甘さに包まれた哀咽の酸味が脳を突き刺す。加えてパンケーキをつまめば、パンケーキ屋でショートケーキを味わう禁忌に触れてみせる。

 

 そう、私は最早規格されたメニューなどで喜悦しない、浮誇の空気を纏う孤独のスイーツ家として今ここに在るのだ。

 そう思えれば、ナイフに宿した以杞包瓜の光さえ望める。

 ただただ、それだけの力で漸く、焼き芋の魅了を討ち払う事が出来たというだけの事ではある。

 

 シャンティの清冷が火照る舌を休ませ、白日に相応しい香りを一日に満たす程強く齎す。それは、周囲の黄色では叶わぬ所業だっただろう。

 

 私は最後に水を飲み干した。そうして仕上がったのだ。

 

 己の判断を、己で正す、それがいいリーダーの役目である。

 

 今なら如何なる難題も、途端に解決出来てしまいそうである。

 ドアを押し、勝利の鐘の音を浴びながら、私は凱旋の門を潜った。

 石焼き芋屋さんでさえ、ファンファーレを鳴らしているのだから、今日もまた良い日なのだ。

 

 いつでも良い日を創造する事は、いいリーダーの条件である。

 

 

 

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