第20話

だいぶ息苦しくなってきた。これは、もうダメなやつかもしれない。こうなれば一か八かを断固断行するしかないのかもしれない。車は崖に前向きに止まっていた。土砂は、後ろの方が、薄いはずだ。後ろのトランクから、窓ガラスをぶち破って、土砂をかき分けて進むしかない。軍手が、確か合ったはず。スコップはないけど。いや、スペアタイヤ*の下に、ナットを回す奴が合った。あれで、掘り進めば少しはマシかもしれない。タイヤをなんとかどけて、工具を取り出す。一、二、三。後部座席の窓ガラスをぶち破った。土砂が、車内に入ってきた。土砂に差し込んだ、ナットを回すやつの手応えがない。あっという間に外だった。

※スペアタイヤとナットを回す奴 正確には、スペアタイヤとL字レンチ。今時の車にはついてない。私がこの愛車を手に入れた時もなかった。ただ、パンク修理キットでは、いざという時クソの役にも立たなかったので、あえて購入して積んでいる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る