第24話 ダンジョン配信サークル

「それでは改めて自己紹介をしようか。僕の名前は出雲いずも まなぶ。さっきも言った通りダンジョン配信サークルの一員で、一応この大学のリーダー的ことをやっているんだ」


 学年は三年で俺より先輩。


 更に自身のチャンネルであるガクチャンネルというものとそこにある動画などを簡単に見せてもらった。


「リーダーと言ってもまだまだ駆け出し配信者なのは見てのとおりさ。チャンネル登録者の大半もサークルメンバーとかだしね」


 そう言われても見たチャンネル登録者数は九十と少しで思っていたよりも多かった。


 この大半がサークルだとすると、そんなに多くのダンジョン配信者がこの大学にいるのだろうか。


「いや、そうじゃないよ。これは所謂インカレサークル。他の大学と合同で運営しているサークルなんだ」

「ああ、だからさっきこの大学のリーダーって言ったんですね」


 つまり彼はあくまでこの大学内の代表であり、サークル全体の代表は別にいるのだろう。


「ダンジョン配信サークルって言ったことからも分かるだろうけど、このサークルではダンジョン配信者を積極的に勧誘しているんだ。そうやって集まったダンジョン配信者同士で交流したり、情報交換したりするのが基本的な活動方針だね。あ、別に会社でもないからノルマとかもないし、その辺りの心配はしなくていいよ。中にはダンジョン配信をほとんどしない人もいるしね」


 詳しい話を聞けば、別にダンジョン配信者でなくてもサークルに所属することは可能だとか。


 興味があってもどうやっていいのか分からない。

 経験者に話を聞いてみたいだけの人でも大歓迎しているとのこと。


「だからダンジョン配信に興味がある人なら、試しに所属してどういう雰囲気なのかを知ってもらう形から始めているよ。だから伊佐木君も良ければ体験という形で入ってみないかい?」


 合わないと思った時は自由に抜けられるので、他のダンジョン配信者から知識を得て、自身の活動に役立てるのも構わないという。


(知識か。でも確かに俺の持っているダンジョン配信についての情報は歪なんだよな)


 運営側のモーフィアスの協力があるので他の配信者よりも優位なのは間違いないのだが、だからこそ基本的なことについて、それこそ初心者で活動する間に知るべき知識などほとんど無いと言ってもいい。


 なにせグリーンスライムと戦った以外では、アルバートという異常なステータスを持った状態でしかダンジョンにまともに挑んでいないのだから。


 呪怨ダンジョンでは入って死ぬのを繰り返しただけなので、呪い殺されることに対する耐性くらいしか経験としては得られていないので。


 だから他の配信者と交流を持って他の人が持っている基本的な情報を得るのは有用だと思われた。


 ただし下手に他人と関わってアルバートの情報が漏れるのだけは絶対に避けなければならない。


(お前はどう思う? モーフィアス)


「その辺りは君の判断によるけど、別に受けてもいいとは思うよ。迂闊な発言さえ気を付ければそうそうバレることはないだろうし、なんならステータスに制限を掛けることも不可能ではないからね」


 そうやって俺にだけ聞こえる声でモーフィアスがアドバイスを寄こしてくる。


 つまり万が一サークルでダンジョン攻略をするとなっても、その際は力を隠しておけるということか。


 まあそもそもバレる危険があるようなら、共同でのダンジョン攻略などには参加しなければいいだけだろう。


 目の前の人物の話だと、このサークルはあくまでダンジョン配信同士の交流の場としての役割が大きいらしく、何らかの活動を強要されることもないようだし。


「分かりました。とりあえず体験で参加させてもらいます」

「お、本当かい。いやー良かった。やっぱり一緒に活動する人が増えると心強いものだからね」

「それじゃあこれからよろしくお願いします、出雲先輩」

「ああ、ガクでいいよ。サークル内では先輩後輩とか上下関係は気にしない方針だし、名前もチャンネル名で呼ぶことが多いからね」


 なんならサークルメンバー同士では敬語もいらないとのことなので、有難くその方針に従わせてもらうことにした。


「……よろしく、ガク」

「そうそう、その感じ。最初は戸惑うかもしれないけどそのうち慣れるよ」


 そうして意外に気さくなガクの勧誘により、一先ず俺はダンジョン配信サークルに入ることを決めた。


「ところで君はなんてチャンネルでやってるんだい?」


 ここでアルバートチャンネルなんてバカなことを言う訳もなく、俺は動画が一つも投稿されていない自分のチャンネルであるイサキチャンネルを教えて、そちらで初めての登録者ができた。


(こっちでは一人目か)


 なおアルバートチャンネルの方はとっくの昔に登録者数十万を突破しており、もうすぐ百万に到達する辺りまで来ているので、その差の激しさにはもはや笑うしかないのだった。

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